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ヘンリー様との婚約は、王家主催のパーティーに参加したのがきっかけでした。普段ならお声がかからないようなパーティーでしたが、お父様の友人のご好意で、参加することになったのです。
そこにヘンリー様も出席していたようです。直接お話はしなかったので、私は全く気がつきませんでした。
パーティーの数日後、いきなり婚約が決まった時は驚きました。第三王子のヘンリー様に求婚されたとあれば、子爵家の令嬢である私は断ることなど出来ません。
彼がどんなに多情で、飽き性で、怠惰な性格だと知っていても受け入れるしかなかったのです。こんな時、身分の差というものが憎らしくなりますね。
ただでさえ憂鬱な婚約話でしたのに、一介の子爵令嬢が第三王子の婚約者になるということが気に食わない方々に、色々言われたりもしました。
「ヘンリー様は器量好みでいらっしゃるからね」
「いくらなんでも子爵家ごときが……」
「きっと高貴な暮らしに馴染めず、すぐに逃げ出すに違いない!」
その批判に負けないように、宮中のしきたりを学び、ヘンリー様の公務を手伝うようになったのですが……ヘンリー様は次第に、私に公務を丸投げするようになったのです。
「君が公務をすれば、君の評判も上がるだろう?だから、これ全部頼むよ。僕は出かけるから」
私のためだと言って押しつけてくるのですから、本当にたちの悪い方です。それに出かけると言って、いつも色々な女性のもとに会いに行っていたのですから、うんざりもします。
まあ、第三王子のヘンリー様といえば器量好みの遊び人で有名ですからね。私としてはヘンリー様がいてもいなくても変わらないので、どうでも良かったですが。
そんな調子だったので、私はいつかこの生活に終わりが来ると思っていました。彼が新しい女性を気に入り、婚約を破棄する日がきっと来ると。
ですから私はこの状況を利用することにしたのです。せっかく公務に関われるのですから、公務を通して我が国の産業や経済について学ぶことにしました。きっと我が家の領地の発展に役立つと思ったからです。
予想通り婚約を破棄された時、本当にホッとしました。二度と結婚は出来ないかもしれませんが、あんな方を支えるより一人で生きた方がマシですもの。
私は婚約を破棄された後、お父様に謝罪と相談しました。これから一人で生きていくために。
「お父様、不甲斐ない結果となってしまい、申し訳ありません。婚約を破棄された身ですから、私は二度と結婚出来ないかもしれません。この領地に一生を捧げます。ですから、領地の管理に関わらせてください。王家で学んだことも生かせると思います」
唯一、婚約破棄をされて心苦しく感じたのは、お父様に迷惑をかけるということです。申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが、お父様は謝罪する私をそっと抱きしめてくれました。
「ローラ、謝る必要はない。私はホッとしているんだ。愛しい娘が、あんな男のもとで一生を終えずに済んだのだから。今後は好きなことをすると良い。領地のことも少しずつ任せよう」
こうしてお父様の許可を得て、領地の管理に関わることになりました。
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