第四話
屋上に来た私達はベンチに隣り合わせで腰掛けていた。
「宮下先輩と私って、どんな関係だったんですか?」
ふと私が呟いた言葉に先輩はうつむく。
「俺と美世は、選手とマネージャーっていう関係だったよ。美世が1番懐いてる2年が俺だったってだけ。俺のことね、1年の中で唯一雪仙先輩って呼んでくれてて、まあ話すときもタメ口だったかな。とにかく、仲は良かったよ。」
ため口⁉迷惑でしたよね、すみません。と謝る私に、俺が許したんよ。と返しながら、先輩は続ける。
「あの日、美世が倒れた時、一番近くにおったのが俺やったのに気付いてあげれんかった。ごめんな。」
すごく申し訳なさそうに謝る先輩。そんな彼の寂しげな横顔に、不意にドキッとした。
「じゃあ、またな。」
「はい。また明日。」
面会時間が終わり、先輩は明日も来るね、と言って帰っていった。あれから2時間ほど話して、先輩のことを思い出せはしなかったけれど、本当に仲が良かったんだな、って思った。
なにより、けがをする前の私とのことをすごく楽しそうに話してくれて。聞いている私がすごく幸せな気分になった。きっと、ものすごくかわいがってくれてたんだろうと思う。
ベッドに横になりながら、明日が早く来てほしいと思っている自分がいることに、ちょっと驚いた。記憶をなくす私は、きっと、言葉では言い表せないくらい先輩のことが好きだったんだろうな。
そんなことを考えながら、私は眠りについた。
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