だってけだものだもの

 ヒルネは何がしたい。何が目的なのか。


「こらあ~。シャルさんさぼらない!! やっぱり料金取ってもいいんですか~~」

「わ、分かってるわよ。今オーダーをもらったから、伝えに行くところよ!」


 慌てて立ち去るシャルは、一言を残していく。


「じゃあ頼んだわよ。悔しいけど、私はやっぱり……頭があまり良くないから。こういう謎解きは、ネクラなあなたの方が適任だから」


 自分を客観的に見られるようになったことはいいことだ。

 だが一言多いぞ。



 しばし物思いに沈もうとしたのが、そうは問屋がおろさなかった。


「やれやれ、シャルも余計な知恵を付けたようだ。あの子は頭が悪いのが、可愛い所なのに」


 背後から、頭を悩ましている当の本人が、声をかけて来たのだ。


「ヒルネ……いつからそこに?」


 ついさっきまで夏凪を、斎川と追いかけていなかったか?


「渚は唯に捕まってかれて、パーティーはお開きになったから、戻ってきたの」

「そうか剥かれたか」


 それはそれで見て見たかったが、俺は目の前の少女にくぎ付けだった。


 ヒルネの水着は、特にどうということもない薄桃色のワンピース。


 水着ではごまかせなかった慎ましい胸は、衆目にあらわになっているが、それを補って余りある可憐かれんさは、隠しきれるものではない。


 まさに水辺に咲いた一輪の花。


 俺は四年間も一緒に行動しながら、シエスタの水着姿をほとんど拝んだことがない。 


 だからこれが終生、俺の脳内ハードディスクに収められる、のシエスタの御姿となる。

 なってしまう……!

 それを残念がるべきか。むしろ「リベンジ」の機会を与えられたことだけでも感謝すべきか。

 俺が複雑な心境で、シエスタ(小)の艶姿あですがたをじっと目に焼き付けていると、


けだものの視線を感じる……」

 

 ヒルネは自分の体を隠すように両腕でかばい、ジトッとした目でこちらをにらんでくる。


「否定はしない。男は皆、心にビーストを飼っている」

「そこで慌てて挙動不審きょどうふしんにならない所は、美徳として褒めるべきか迷い所だね……」

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