夏祭りと花火大会を一緒に消化するのはいかがなものか

 ヒルネが「名探偵の遺産」を見極めるために、我らが一行いっこうにご所望されたことがある。


 それは夏を満喫すること。


 一人でやってろと言いたくなった。


「遊びは大人数でわいわいやってこそ、じゃないか」

「お前は大勢で騒ぐのは、好きじゃなさそうな印象だったんだがな」

「そうだよ。でもたまには趣向を変えて、れるのも悪くない」


 さいですか。


「まずはやっぱり『祭り』だね。私は日本のお祭りには、久しく足を運んでいなくてね。あと花火大会も。この二つをいっぺんに済ませるなんて、無粋ぶすいな真似はしないでくれよ?」


 ヒルネの強い要望で、「夏祭り」と「花火大会」は別カウントのイベントとなった。


                 *



今日日きょうびだいたい大きい所は、どちらにも出店が出ていて一緒くたにやってるだろ……」


 会場への道中、俺はぼやく。


「せっかく君は日本に生まれたのに、大きな損をしているよ。二回楽しめる口実があるなら、二回満喫しないとね」

「そうだそうだー。省エネはんたい!」


 はやし立てる斎川。


 ふっ、時代は省エネだ。

 省エネ男子の方がモテるんだよ。……だよな?


「そば飯みたいなものだよ。わざわざおいしいものを混ぜ合わせても、魔法のようにおいしくはならない」


「え~、私は好きよ、そば飯」と口を挟む夏凪。

「オムそばもおいしかったわよ?」


「はあ……チャーハンや焼きそば、オムレツやオムライスで楽しめばいいものを、欲をかく者の考えることは分からないよ……。なぎさとは一度議論をする必要がありそうだ。でも焼きそばパンは別だね。あれは革命だった」


 探偵の妹の感性がよく分からない。


 ちなみに、女子たちは「当然でしょう?」とのごとく浴衣ゆかたを着ている。

 夏凪が赤、斎川が白、シャル青、フランス国旗だな。

 そしてヒルネが水色だ。

 プールと同じてつを踏まないように、夏凪と斎川は感想を求めてこなかったので、俺としても一安心だ。

 あんな歯の浮いたようなセリフは、できるだけ言いたくない。


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