4
スケルトン・サファイア
また
最近はこんなことばっかりだ。
自宅に戻ってからも、のびのびと夏季休暇をエンジョイする暇は与えられなかった。
斎川家に当主の好意で、食客に迎えられたヒルネは、かなりの頻度で我が屋の正面から、ほぼ毎朝俺の部屋に侵入を試みてくる。
そのたびに「男の領域」の開示の阻止に成功はしているが……。
おい、ちょっと待て。
今朝はもう一匹いるぞ……!
「まさか分身の術か!?」
探偵の妹は忍術まで駆使するというのか!!
俺はがばっと跳ね起きる。
「どうも君塚さん、おはようございます~。突撃お宅のご子息の寝顔、突撃リポーターの唯にゃですっ」
「アシスタントのヒルネです」
一度目のお宅訪問にして、さっそく
かわいそうに……
「もうヒルネに関してはあきらめの境地だが、何でお前までいるんだ!」
「私も変態さんの自宅に前々から興味がありまして、ぜひ伺いたいと思ってたんですよ。くんくん、ほほう、独特のにおいがしますねっ」
「部屋の匂いを
この状況では、お前の方がよっぽど変態さんだよ!
「ではではお次は、メインディッシュを頂きます!」
「頂きます」
それだけは阻止。断固阻止!
「ぐぬぬぬ、二人分の力を合わせているのに……。今日はいつもよりさらにしぶといね……」
「対象が二倍だからな、恥ずかしさも倍々ゲームだ……!」
絶対に負けられない戦いがそこにはある。
「こうなったら唯。秘密兵器の出番だ。私が君を連れてきた
「はいっ」
「な、何をする気だ!?」
「ふふふ。お忘れですか……、私の左目のサファイアには、透視能力があることを!!」
「おまっ」
本編でも触れなかった
「親御さんの形見をこんな悪ふざけに使うんじゃない! 空のお二人が泣くぞ!!」
「どうですかね~。娘の元気な姿を見られれば、本望じゃないでしょうか」
この娘からご両親の性格を
いややっぱり
俺が危惧しているのは倫理的なものもあるが、単純に斎川を心配してのことも多分にある。
彼女のサファイアの透視能力の「ピント」を合わせるのは、けっこうコツがいるらしいことを、以前聞いた。
本人はもう五年以上、肌身離さず装着しているから何のことはないが、他人が手に入れてもうまく調節するのは難しいそうだ。
だがいかに
つまり最悪、漫画などで見るあのケースに……。
「あ、近づき過ぎました……血流とお肉が見えます……。ぎもぢわるい……(おろおろおろ)」
なった。
ピント調節をミスって、対象に接近し過ぎると人体の神秘を拡大状態で目にして、こうなることは想像に
俺も想像もしたくないが、吐き気を
「
ヒルネがぽつりと言う。
こういうことのための遺産では、絶対ないと思うんだがな……!
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