肉食系女子は祭りを堪能する

 祭り会場に到着後、一団となって出店を周る。


 まずスーパーボールすくい。

 次に金魚すくい。

 そして水風船すくい。


「いやすくうの、好きすぎるだろう」

「何ですか何か文句でもありますか、変態さん?」

「探偵の仕事はいつだって、無辜むこの民を救うことだよ、助手さん」


 その救うは字が違う。うまく言ったつもりか。

 しかもヒルネが、どれもこれも上手なのが憎たらしい。(特に水風船はめっちゃすくってた)


「ところでこの前から気になっていたが、君は変態なのかい?」

「その話はまた今度な……」

「ふむ」


 続いて食べ物の屋台で、食料を調達する。


 たこ焼き。

 イカ焼き、フライドポテト。

 焼きそば、フランクフルト、ベビーカステラ。

 クレープ、綿菓子、から揚げ、お好み焼き、焼きとうもろ……

 

「いや食べすぎだろ」

「問題ない。私の胃は絶賛成長期だから、暴力的なまでに元気いっぱいだ。万が一、食べ残しても、助手さんが責任を持って片づけてくれる」

「助手は成長期終わりかけだから、胃は疲れ気味だということを、頭に入れておいてくれ……」

「最後はカキ氷で頭をキーンとさせるのが、日本の夏の風流というものだと習った」

「お前、間違った文化を教えられているぞ」


 姉か。姉から流れてきた知識か?

 

 結局、ヒルネを筆頭とした女子軍団は、購入した大量の食べ物をぺろりとたいらげてしまった。


「このぐらい余裕でしょう? 君塚こそ、よく焼きそばとたこ焼きだけで足りるわね」と、しれっと夏凪は言う。

「普通だと思うが。お前らこそ、その細い体積のどこに、それだけの量が入る隙間があるんだ……」

「祭りのご飯は別腹ですよ~」と斎川。

「私もニホンの祭りは初めてだけど、雰囲気っていうのかな、食が進むのよね」とはシャル。


「あ、イカリングもある。あれも食べたーい」

 夏凪が新たなターゲットを発見。


「じゃあ行こうじゃないか」

 ヒルネの音頭で、彼女たちは出店へ勇んで出向いたのだった。


 これが噂の肉食系女子という奴らか。怖い怖い……。


                  *


 祭りの最後にヒルネは「千本くじ(ひものくじ)」に挑戦するようだ。


 店主はいいお年のお婆さんだ。

「これ当たったことないんだよな。確か店主の顔色をうかがうのが攻略法って、何かの漫画で読んだ気がしたな……」


「バカか、君は」


 お、探偵直伝の、とっておきの攻略法でもあるのか?


「いや? でもこんなご老体が、いちいち当たりの場所を、記憶しておけるはずがないだろう」


 もっともな正論だが、失礼だな。

 お婆さんも心なしかむっとしているぞ。


「こういうのは無心でやる方が吉、と相場が決まっているんだ、よっと」


「はい~残念。お嬢ちゃん、ティッシュ一箱ね~」


「…………」

「無心でやる方が、なんだって?」


 邪念が心中を渦巻いていたみたいだな、妹よ。


「………ぅるさい」


 罵倒ばとうにもいつもよりキレがなかった。


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