法を破る者は、相応の報いを受ける

「まったく! もう少し早く連絡をくれれば、わざわざ夜の絶海を戻る必要もなかったのに……もう一度不法乗船することになったわよ!!」

「あれでもできる限り、最速のタイミングで連絡したんだ。だから怒らないでくれ。あと今、この船の所有者がいるから……」


 その発言はマズい。と今から言っても遅いか。


「ふほう、じょうせんですと~~~?」

「げっ、サイカワユイ!」


 ようやくシャルも斎川に気づいたらしい。


「私の天使があまりに可愛すぎて、周りの警戒をおこたっていたわ。クッ、ケアレスミス……!」


 安心しろ、ケアレスミスはいつものことだ。

 あとヒルネはお前の天使じゃない。


「私はあなたの天使じゃないよ」


 ほらご本人もそう言ってる。


私たち姉妹シエスタとヒルネは、人類全員の天使」


…………。

  

「シャルさん……、乗客名簿に名前がない、と報告を受けた時は『まっさかー』と思って、スルーしましたが、」


 おお……スルーした。

 そして別の意味で、そのテンションでスルーしてたのか。

 大丈夫か、斎川家当主。


「まさか本当に不法乗船とは……しかし私は優しいのです。特別にのよしみで、料金を免除してあげましょう……」

「本当!? あなたいい子ね!!」

「一回目を。二回目の乗船代は払って頂きます」

「ちょっとそこはもう一回まかりなさいよ!」


「はあ……」


 ヒルネが両手でお腹をさすりながら、項垂うなだれる。


「私はもうお腹がいて空いて、お腹と背中の皮がくっつきそうなんだけど……」


 有名だが、最近は聞かなくなった表現だな。


 というわけで、天使の一声により満場一致で、朝食タイムとなった。


「じゃ、じゃあ! ここの食事代を私が出すからっ、船の代金は勘弁して!!」

「別にいいですけど……。このレストランでこの人数分支払ったら、チケット代より高くなりますよ……?」

「え」


「よ――――し、みんな! シャルのおごりだってさ。バイキングじゃなくて、各自好きな物を頼もうぜ!!」

『おお~~!!』

「ええ、ちょ、キミヅカァ~~~!!!」


 因果応報いんがおうほうとはこのこと、相応の報いを受けるがいい。




*この後シャルは、一日客船でただ働きする条件で、手を打ってもらいました。


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