そうして探し人は尋ね人に化ける

 あの後すぐに斎川、この豪華客船の所有者である斎川唯さいかわゆいと合流した。

 待ち人から探し人へクラスチェンジした人物が、見た目をしていたら、すぐに見つかるだろうと手分けをして待ち人を探したが……、結局見つからず。

 夜もけ捜索は打ち切りとなり、各人は自室に戻って就寝することとなった。


 ちなみにシャル、シャーロット・有坂・アンダーソン(探偵の自称弟子。いささか以上にポンコツ)にも連絡を入れたが、下船に間に合っていたかは微妙な所だ。

 何かあれば、一応情報を教え合おうと連絡先を交換したが、まさかこんなに早く使うことになるとは……。


 しかし、あいつはせっかちだからな。

 事件が終われば、その場所には何の思い入れもなく、はいさよならのタイプだ。

……こういう表現だと好感が持てなくもない。

 ただ単に感慨かんがいにふける情緒を、持ち合わせていないだけなんだがな……。


 とにかく俺は割り当てられた自室のベットに、日中の疲れと共にもぐり込んだわけだ。


 ちなみに「(今日はどうされます? 私は別にまた一緒のベッドでも構いませんが……)」と目で会話してくる斎川に、やはり俺も目で「(……厚意は嬉しいが、遠慮しておく)」と返した。

 言葉にしていたら、よからぬ妄想をした夏凪が、烈火のごとく理不尽な怒りをまき散らしただろう。

 やはりこの中学生、気が利く。(だが目でのいらぬ会話も省略してくれれば、満点評価だったのに)


 ドアの鍵はちゃんとかけた。

 電気も消した。

 朝日をさえぎるためのカーテンも閉めたはずだ。


 だからその後起こった出来事に、俺に一切の過失はないと先に断っておく。




 閉じたまぶたの外側に、明るさを感じる。

 おかしい。カーテンを閉め忘れたか?

 いやこの光は人工的なものだ……。


 そして室内に、正確に表すならベッドに横たわる俺に、おおいかぶさるように、小粒こつぶながら人の気配を感じる。

 というか明かりをつけられて、ここまで近づかれるまで、俺はこの侵入者に気づかなかったのか。

 害意を一切感じなかったからとはいえ、やはりなまっているな……。


 侵入者は俺の顔をのぞき込んだり、俺の(使用済み)掛け布団を手に取り、すんすんと匂いをいだりしているようだ。

 いや本当に後者はなんなんだ。


 すっかり目を開けるタイミングをいっした俺が、はてさてどのようなアプローチを試みようか思案していると、そいつは、あろうことか、


 俺の腰回りの掛け布団を引きがし、続いて下半身の衣服をパージ……


「おいこら、いったい何しやがる!!??」


 戦いとは別のベクトルの、脳内危険アラートに本能が従い、俺はがばっと跳ね起きる。

 当然、侵入者、ぱちくりと青い瞳をまたたかせる銀髪の少女と、面と向き合うことになった。


「あらら、起きちゃったか。失敗しっぱい」

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