第6話:忌み子の王子3

「司祭? なんでこんな所にいるんだ?」


 アルマは司祭を疑問の目で見つめていたが、司祭様はと言えば、ガン無視ですよ、ガン無視!


 あの、相手は一応王子様ですよね?


 それより、私に熱烈な視線を向けるのは止めてくれませんか? 私、あなたのこと嫌いなんです。


「いやいや、実に有意義な鬼ごっこでしたね」

「べ、別にあなたと遊んでるつもりは無いんですけど!」

「おやおや、随分と嫌われたものですね」


 そりゃ、当然でしょう?! どこに好かれる要素がありましたかって話!


 しかし、何故この司祭は私達の居場所が正確に分かったんだろう?


「貴女は貴重な人材なのです。一緒に来て頂けませんか?」


 いやいや、私のこと貴重な人材って扱いじゃなかったよね?! 


 人のことを裸にするのが、この国の礼儀ってことですか? むしろ、すぐ居なくなるだろって雑な扱いだったんじゃないの⁉


「……お断りします」

「ハァ、つくづく手が掛かりますねぇ」


 そんな司祭とやり取りしていると、真横から何やらフツフツと伝わって来るものが……


 あ! 王子様のこと、すっかり忘れてた。


 あ〜ぁ、怒ってる、怒ってる……


「無視すんなぁ、コラァァァ!!」


 えぇ?! ちょっと、いきなり飛び掛からなくても良いんじゃない?!


「やれやれ、厄介な人と知り合いましたね」


 あなたよりはマシだと思いますけど……

 って、司祭様、見た目武闘派に見えないんですけど結構余裕そうですね?


 そして、次の瞬間の光景は予想とちょっと違う方向に進んでいた。


「吠えるだけで、口ほどにもないですね」

「クッ、クソがぁ……、なんでだ?!」


 勢い良く飛び掛かって行ったアルマだったが、司祭はいとも簡単にいなしてしまったのだ。


 えぇ!? 私の前で白目向いてた人ですよ?


「な、なんだ?! お前、何をした!!」

「私は何もしていませんよ。強いて言うなら、そこの少女が原因です」


 えぇ!? 私ですか?!


「どういうことだ?!」

「彼女には、貴方の力を抑制する力があります」


 いやいや、聞いてない、聞いてないです!


「彼女はその力で、貴方とこの国を危機に陥れようとしているのですよ?」

「そ、そんな訳ないでしょ⁉」


 ほら、そこ! 『本当か?』みたいな視線をこっちに向けない!


 私のこと散々、間抜けだ何だと言っといて、なに真に受けてんの?!


「貴方も感じたのではないですか? 彼女の近くにいると力が出ないことを」

「……まぁ、確かにコイツの間抜けっぷりに、気が抜けちまうことはあったが」


 お〜い、それは悪口って言うんだぞ?


「彼女を抱えている時、力が入らずに戸惑っていたのではないですか?」

「……だったらなんだ」


 えぇ⁉ 見られてた?! どこから?


 と、言うかアルマの反応を見るに図星っぽい。


 それで、剣と私の重さを比べてたってこと?

 あぁ、なるほど、納得!


 ……あっ、でもちょっと待って。

 私を抱えている時の方が力が入らないてことは、もしかして、私のこと『なんて重たい奴だ』って、思ってたってことですか?!


「彼女にそのつもりが無くとも、誰かに利用されてしまっては一大事。ですから、我らが適切に管理をさせて頂きます」

「か、管理って……」


 生贄でょ? 生贄!

 あぁ、もういい! こうなったら、司祭このひとが何をしようとしてるか、ここで叫ん、で……


 あ、あれ? なんか意識、が、もうろうと……


「やっと効いて来ましたか」

「な、なに、を……」

「なぁに、一種の催眠魔法です。安心してください。、生かしておきますから」


 薄れる意識の中で司祭がアルマに向かって何かを告げ口しているのが見えたが、その直後にアルマは力無く立ち上がると、私を一瞥してこの場から去って行ってしまった。


「さて、ではお連れしましょうか」


 その言葉が聞えた直後に、私の意識は途切れてしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る