第17話 サンクチュアリー
結局、《天国への扉》なんて存在するわけがないという結論に達した三人。
しかし、「《神の扉》とは何だ?」というわけで、そちらの方向に行くことにした。
ずーっと通路を歩いていると、一定距離ごとに壁に松明を取り付けるらしい台がはめ込まれているのがわかった。
明かりはまったく入らないところだが、儀式か何かのときにはかなりの人― たぶん神官や巫女だろう― がこの通路を通っていたのだろうと想像した。
数百メートルほど歩いただろうか。前に明かりが見えてきた。
明かりの具合から自然光のようだ。そこは大きな部屋だった。いや、部屋というには大きすぎる。
天井は20メートルはある高さだし、部屋の奥行きは50メートルはあるだろう。幅は30メートルほどか。聖堂か何かのホールのようだ。
中はすべてが白い大理石のような石で作られていて、天井にはめ込まれた明り取りの窓から入る光のためにすべてが白く光っており、神々しく見える。
明り取りの窓は、聖堂の天井にずらっと両側に十ずつほどあり内部を煌々と照らしている。聖堂の入口近くには左右に別の部屋への入口があるようだが、その入口はふつうのドアよりやや大きいくらいだ。
そして部屋の奥には大理石の階段があり、そのさらに奥まったところにはサンクチュアリー(聖壇)らしいものがあった。
イザベルはすぐに奥のサンクチュアリーのところへ行こうとしたが、右の部屋の中にあるものに気がついたレオは、そちらへ向かって走り出した。カイオが続き、しかたなくイザベルも後を追う。
部屋はサンクチュアリーのある部屋からの明かりで入口あたりが明るいだけだったが、白い大理石造りの床や壁の反射で明かりはなくとも内部はよく見える。
そこにあったのは、武具だった!
レオは聖堂に入って周囲を見回した時、その部屋の中から金属の反射する光を見たのだ。
部屋に入ってすぐに目に入ったのは、対面の壁にかけてある金色をした丸い盾だった。直径50センチほどあるそれは、丸い形状にそって模様が刻み込まれておりシックな造りだった。
長さ20メートルほどのその部屋は、武器のほかにも色々な使いみちもわからない器具のような物が部屋いっぱいにあった。壁にかけられたり、棚におかれたり、台の上に置かれたりしている。しかし、その大半は武具のようだった。
カイオもイザベルも目を輝かして、剣や弓などを次から次と手にとって見ている。ひと目見ただけでも、どれも謂れありげな武具のようだった。
(盾はあとでいいとして“実際、そんなもの必要ないだろうし…”何よりもまず剣を見つけなきゃ…)
きょろきょろと、どの剣がいいかと見ているレオ。
カイオ王子は、槍が気に入ったらしく、長さや穂先の違った槍を次々に手にとって壁にむかって突き出したりしている。
イザベルはと見ると、まるで一目惚れのようなうっとりした目つきで弓を見ている。どういう素材を使っているのかわからないが、白磁色に輝く弓は和弓と違って手で握る弓の部分がいくぶん手前に引っ込んでいる。
長さは1メートル程度、半弓といっていいくらいだが、手で握る部分は細いものの、幅は8センチほどとかなり広く、先端に向かって細くなっている。
矢筒は70センチほどの長さか、やはり弓と同じような材質の白色のシャフトでどんな鳥の羽根かわからないが虹色に輝く矢が10本ほど入っている。
「決めたわ。私、これを拝借することにするわ!」
「おっ、イザベルはもう決めたのか。じゃあボクはこれにしようかな...」
カイオが高く掲げた槍は2メートルほどの長さで青味がかった軸をしていた。
穂の長さは30センチ位だが、穂の根本あたりから三日月型の刃が両側に出ていた。石突も先端が尖っており、後方にいる敵を不意打ちできる形になっている。
レオは本物の剣を持ってないこともあってか- 漁師の息子は剣など持たないのだ- どうしても剣が欲しいのだが、目移りして困るほど多くの種類の剣がある。
いや、剣だけではなく、武器類も防具類もかなりの種類があるのだ。
(ここは武具博物館か!)と毒づくレオだった。
カイオもイザベルもすでに武器を選び終わって、今は盾や鎧などを物色しているようなのでレオも気があせる。
再度、剣が飾られている場所を見渡したレオが目を止めたのが、部屋の奥の角に立てかけられている大剣だった。近寄って手にとって見てみる。
“長い”そして“重い”
それが正直な感想だった。
長さは1.5メートル以上はあると思われるその大剣は、ツヴァイへエンダーに似た感じの両手剣だった。重さも4キロはあるだろう。
黒い鞘は刃の根本から20センチほどのところにある刃の広がりに沿って広くなっており、それから刃先に向かって次第に細くなっている。
“これじゃあ、剣を抜けないんじゃないか?”
と思いつつ、剣の柄に手をかけ抜こうとすると、どういうことか剣は鞘から抜かれて手に握られていた?
“えっ、何だ、この剣?抜こうと思っただけで抜けたぞ?”
どうやって鞘から抜くことができたのかまったくわからなかったが、手にしている大剣はやはりずしりと重くてカッコいい。
「くーっ、いいなぁ、この感じ!まるでRPGのヒーローが大剣をもっているみたいじゃないか!」
「えっ、アールピーがどうしたって?何だ、その物干し竿みたいな長い剣は? それは飾り用だろ? 装備しても鞘から抜けないよ?。」
思わず口から出た感嘆の言葉を聞き止めたカイオが首を横に振りながら“ヤレヤレ”とでも言いたそうな顔で言う。
「ちょーっとレオ、何よ。その剣? 長すぎるし全然実用的じゃないでしょ?」
イザベルも正直な意見を言う。
しかし、レオが大剣をふたたび鞘にもどそうとすると、次の瞬間大剣は元通り鞘におさまっていた。
「おっ!これはいい!」
どういう仕組なのかわからないが、“実用新案”ものだ。いや、“特許物件”か。
その一部始終を見ていたカイオもイザベルも目を見張っている。イザベルに至っては口が開いたままだ。
(開いた口もカワイイな…)とレオが思っていると
「おい、なんだ、その剣は?そんな剣は見たことがないぞ?」
「なにそれ?それだと腕が短くても抜けちゃうじゃない?」
「さあ、勝手に抜けて、勝手に鞘に収まったんだ。って、オレを手短ザルみたいに言うな!オレの手の長さはふつうだ!」憤慨するレオ。
「しかし、なんとも便利な剣もあったものだ…」
“よし、オレはこの大剣を持つことにする!”とレオが決めると即座に
《レオは フラガラッハの剣を装備した》
とウインドーに表示された!?
「まったく驚いたわ。私のこの弓矢もなんか仕組みがあるのかしら…」
引き続き驚く二人だったが、レオ自信も驚いていたが、気に入って選んだ剣が実用的なものとわかって少々鼻高々だった。
「剣にせよ、槍にせよ、リーチが長い方が利があるからな」
「そうね。その点、一番メリットがあるのは弓ね」
「そうだな。でも、まあこんなモノはこのあたりじゃ使う機会もないだろうがな」
カイオとイザベルは今度は剣を探しているようで、先ほどレオが見ていた剣が置かれている場所で、剣をとって見たり、振って見たりしている。
「カイオもイザベルも剣はもっているだろう?」
「いや、ここにあるような剣は持ってないよ」
「私、このショートソードに決めたわ!」
イザベルは刃渡り80センチほどのやや細身のショートソードを鞘から抜いて、その刃を見ながら言った。
「近接戦用の武器ね!」
“おいおい、誰と戦うつもりなんだよ?”
とツッコミたかったがやめた。
「ボクの近接戦用はこれに決めた!」
カイオ王子が選んだのは、刃渡り1メートルのショートソードだった。
刃幅もイザベルが選んだのに比べてやや広い。
近接戦用か...
この大剣は、もし敵の剣で振り払われたり、落としたりしたら危ないな。
そう思ったレオはダガー風の全長50センチほどの短剣をカイオたちに習って予備の武器にチョイスした。
武器を選ぶのが済むと、今度は防具を選びはじめた。
胸当てや兜などを取り上げてみたりしながら品定めをしていた。
「防具はたぶん要らないと思うから、さっさとこの場所をもっと調べた方がいいんじゃないか?もっと武器や防具が欲しければあとでもどって来て見ればいいと思うし…」
レオの提案にカイオもイザベルも同意したので、今度は反対側の部屋に入ってみる。
どうやらその部屋は書庫のようだった。四方の壁は棚だらけで、どの棚もびっしりと…
石板が積み重ねられていた。
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