第4話 おまけの守護天使
「えーっ、オレとおしゃべりをしながら片手間で創っちゃったのォ?」
「何を言っているの?世界の一つや二つ、あくびをする間に創れますよ」
「さすが創造主さまだ!」
「おだてても何も出ませんよ… って、そうか、まだあれがあったわね」
「えっ、まだ何かくれるの? 絶世の美女のPTパートナーとか…」
「そんなのは自分で見つけなさい!」
「ちぇっ(ケチ)!」
「美女を付けるとか付けないとかで、心が大きいとかケチとかの判断基準にはなりません!」
「あちゃー。また心を読まれた」
創造主様に言った言葉を少し反省したオレ。
「まあ、私もあたなにご褒美をあたえるために会っているのですから、美女うんぬんは別として、度量の狭いことはしません」
「どうも。でほかに何をくださるんですか?」
「あなたの守護神、いや守護天使のようなものをつけてあげます。私の分身のようなものです」
「えっ、守護天使?それはスゴイ!で、その天使はどんなチートを持っているの? 創造主エタナールさまの分身だから、瞬きをする間は無理としても、くしゃみをする間に新しい世界を創れるとか…」
「私の100京分の1の能力です。」
「えーっ!100ケイ分の1???」
「そう。創造主である私の100京分の1の能力。」
(えーっと、“ケイ”ってどの単位の数字だったかな… 万、百万、千万、億…)
「10のあとにゼロが16個つく数字の単位ですよ」
「ゲゲゲ、なんじゃ、その数えることも出来そうにない天文学的数字は?!」
「数字で表せば 1,000,000,000,000,000,000」
あまりのゼロの多さに、動転してしまったオレ。脳の中は無数のゼロがあざ笑うように飛び回っていた。
「あのー…」
「なんでしょう?」
「100分の1じゃなくて、”1ケイ分の1”???」
「そう。1,000,000,000,000,000,000 分の1」
「それって、メッチャ非力な天使じゃん…」
「あなたは創造主の力とか能力とかまったく知らないでしょう?」
「はい。知りませんです」
「私の能力の100京分の1って、それはそれで十分使えるものなのよ?」
「そうなんですか?」
それには答えずに、金髪の創造主は自らの金色のまつ毛を細い指先で軽くつまむと、一本のまつ毛を抜いて「フッ!」と息を軽く吹きかけた。
細くて短い一本のまつ毛は、息を吹きかけられた瞬間、ホタルのような金色の光になり、金色の光を放ちながらエタナールの回りを飛んでいたが、エタナールがその細くてきれいな人差し指で指し、
「あの人が、これからあなたが守護する人よ。さあ、行きなさい!」
創造主さまが命令すると、金色の光を放つそれはオレのところに飛んできて、ふわっと右肩の上に止まった。
よく見てみると、体長3センチほどのそれは、決してホタルなどではなく、よく見ると女性の形状をしていた。止まっている時は羽を羽ばたかせる必要はないらしく、薄く透明で虹色の虹彩をもつ2枚の羽は背中から蝶のように生えていた。
小さい顔だが、それは眼の前にいる金髪の創造主にどことなく似ている。
だが、創造主エタナールが大人の雰囲気を感じさせるのに対して、ミニチュアコピーとも言えるそれは少々いたずらっ子みたいなクルクルした目と少し上を向いた小さな鼻をもっていた。
そしてエタナールと同じようなロングスリーブのドレスのようなもの― 少し短めだが― を纏っていたが、色は青みが強い。守護天使が放つ金色の輝きは、彼女の息と同期しているかのようにわずかだが強弱をくり返していた。
(へーェ… 結構カワイイな)
「マスター、どうもありがとうございます。」
突然、ちょっと甲高い声で話しかけられ、オレはビックリしてズッコケそうになった。
「ちょ… お前もエタナールさんみたいに心が読めるのか?」
「はい。私はエタナールさまの分身ですから」
「どうやらそうらしいな…」
「マスター」
「ん?」
「早速で申し訳ないんですけど、最初のお願いがあります」
「えっ、最初のお願い? まさか3つしかお願いが聞けないなんて…」
「そんなことはありませんよ、○○さん」
金髪の創造主、エタナールが助け舟を出す。
「その子は今、生まれたばかりなので、保護をする対象者との結びつきを強固にするためにも、保護を受ける者は名前をつけてあげなくてはいけないのです」
「えっ、そうなの、守護天使ちゃん?」
「はい、マスター。お願いします」
守護天使ちゃんは、ペコリとかわいいおじぎをした。
「よーし。ではお前をティンカーベルと名づ…」
「ちょっとォ!何で『ピーターパン』に出てくる妖精と同じ名前にしようとしているのよ!?」
創造主さまから横ヤリが入った。
「あれっ、マズかった?」
「当たり前でしょう?まったく独創性がないわね」
(クソ!)
「あら、何か考えました?」
「いえ、何でもありません。じゃあ、汝を『志乃=シーノ』と命名する!」
「ありがとうございます、マスター!わーいうれしいな♪」
「まあ、ティンカーベルよりマシだけど、結局、葡萄牙語で「鐘=sino」にしちゃったのね…」
(くぬぬ… そこまで見破ったか!)
「たかが100歳生きたくらいで万物の創造主である私を欺こうなど、100京年早いわ!」
「エタナールさま、マスター、私はこの名前が気に入りました」
「それ見ろ!」
「まあ、本人が気に入っているのなら仕方ないわね…」
名前を付けてもらったよろこびでシーノはブンブンオレの回りを飛び回った。
「さて、では命名もしたことだし、どうやら100京分の1という桁外れの攻撃力をもっているようだし、そろそろDKXの世界へ出発すると…」
「なに?それは私へのあてつけですか?」
「いえいえ、滅相もありません。これだけご褒美をもらったのに、そんな子どもじみた真似はしません」
あわてて弁解をするオレだった。
創造主様がご立腹されて、“DKXの世界”は『Delete』しました。
代わりに“
などと言われてはたまったものではないからだ。
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