第3話 ご褒美

「ええっ?!オレが人間として立派に生きたァ???」


「そのとおりです。あなたのように生涯を欲もなく、名声ももとめず、謙虚に世のため、人のために尽くして生きた人間はとても尊いし立派なのです」


「そんな人間はほかにもたくさんいるでしょう?お坊さんとか、神父さんとか、牧師さんとか、ラビさんとか…」


「それらの聖職者が、私利私欲なく、世のため、人のため尽くすのは当然です。ただ、現実には真の意味でそのような模範的な聖職者の数は残念ながらごく僅かになってしまいましたが…」



「えっ、そうなの?いやいや、そうじゃなくて。その、ふつうに地味に生きたオレをなんで呼んだんですかって聞いているんですよ!」


「それは、名声ももとめず、謙虚に世のため、人のために尽くして生きたあなたにご褒美をあげるためですよ」


ようやくここまで聞いてくれたか、と金髪の創造主は今度こそニッコリと誰から見てもわかる喜びを表情に表わした。



「ご、ご褒美???」


「そうです♪」


「天国行きの切符とかくれるんですか?」


「そんなつまらないものなんかあげません」


(天国ってつまらないんだ...)


「あんな美女がうじゃうじゃいるだけのところって、じきに飽きてしまいますよ」


「それもアリかな… って思ったりして」


「それに天国なんて実際には存在しませんから...」


「やっぱりな。サンタクロース伝説と同じなんだな...」


「やはりあなたも男ですね。」


「ま、一応ね…」



オレの答えを聞いて、ちょっとしゅんとなった気がしたが、すぐに気分を切り替えたようで


「あんな天国なんかとは比べものに出来ないくらいのものなんですけどね…」


とイヤでもオレの関心を引きつけるようなコトを言う金髪の創造主であった。


「えっ、じゃあ何をくれるんですか?」


なんだかウマく誘導されているな…と感じながらも、やはり飛びついてしまうオレ。



「あたなが希望するものであれば何でも」


「な、なんでも!?」


創造主様の大バーゲンかよ?!



「ただし、元の世界に戻りたいという願いには応えられません」


「なーんだ、やはり制限付きか…」


「いえいえ、勘違いしてはいけません。

それは、あなたにとっては今まで生きてきた世界には愛する家族もいるし、

ずっと活動を続けてこられたNPOだかNGOだかよくわかりませんけど、

そんな団体もあるでしょうから、愛着もそれ相当にあるとは思いますけど」


「それがわかっていても、元の世界にはもどしてくれないんだよね?」


「それよりも、あなたが若い頃に夢中になったDKのゲームのような

世界で冒険を、ロマンをしてみたと思いませんか?」


「ええーっ、DKの世界‼」



それを聞いた時、オドロキのあまりオレは10秒ほど呼吸をするのを忘れていた。


「ええ!」


金髪の創造主が肯定するのを聞いて、



「ヒューウ、ゴホゴホゴホ。そんな世界があるのー?」


窒息しそうになって、思いっきり空気を吸いこんだとたんに咳き込んでしまった。


「だいじょうぶですか?お水でもあげましょうか?」


「ゴホゴホ… いえ、だいじょうぶです。DKの世界って存在するんですかァ?コホコホ」


「いえ、さすがにいくら創造主でも、そんな趣味の世界なんて創っていません。」


「なーんだ。ないんだ...」


「創るんですよ」


「へ?」


「あなたが望めば創ってあげると言っているんです」


「ホンマー!?」


「ホンマやでー。あら、何を言わせるんですか!」


「いや、オドロキのあまり、使いもしない大阪弁が出てしもうた」


「ホンマ…いや、本当ですよ。コホン」



 つられて大阪弁で答えてしまった金髪の創造主は、心なしか頬がすこし赤くなっているようだが、キリッとした表情になり、真剣なまなざしをオレに向けて創造主は言った。


「じゃあ、オレが欲しいのはDK〇〇と同じ世界設定で…」


「おーっと、ストップ、ストップ!」


「何だよエタナールさん、オレの好きなDKの世界設定じゃないのかい?」


「“DKのゲームのような世界”と明確に言ったでしょう?

あなたが生前プレイしたDKと同じ世界設定だったら、ストリーも魔王の城も、

仲間の名前も居場所も始める前からわかって面白くないでしょう?」


「それもそうだな」


「だから、私、“永遠なるもの、エタナール”があげるご褒美のDKは、

DKX=ドラゴンキラー・エックスとでも言える、まったく新しい世界なの」



「DKXか。何だか今度新発売されるDKのゲーム名みたいでワクワクするな。

で、いつ創ってくれるの?いつ行けるの?」


「そうあわてないで。あなたへのご褒美はそれだけじゃないんだから」


「おっ、まだあるのか!オレが演ずる勇者はチートだらけとか…?」


「そんな、魔王でさえも片手でひねり潰すような力や能力をもってプレイして

何が面白いのですか?」


「それもそうだけど、ふつうの村人なみに弱いのもちょっとね…」



DKXの世界での勇者たる自分の能力レベルに少し心配になった○○だったが... 


「あなたにはふつうの人間の能力の100倍の力をあたえます!」


「えええ――っ!100倍! す、すごーい‼」


(って100倍ってどれくらいの能力なんだ?)


「ちなみに、ふつうの人間は自分の体重のものを持ち上げることができると言われています。生きていた時のあなたの体重は何キロでしたか?」


○○の心を読んだ金髪の創造主は疑問に対して質問を返してきた。


「えーっと、年取ってからは少し太ったけど、若ころは60キロだったよ」


「では、60x100は何キロですか?」


「えーっと、60x100=6000だから… ゲゲっ、アフリカ象を持ち上げれる?!」


「よくできました^^」


「その計算だと、高校時代のオレの100メートル走の記録は17秒だったから…」


「17÷100=0.17ですよ。」


「ゲゲっ、コンマ17秒!!!」


「それにしても男子で17秒って、メチャカメさん過ぎません?

女の子の後ろでもわざと走っていたのですか?」


「ほっといてくれ!」



金髪の創造主のイジりに少しヘコみそうになったオレだったが、100倍能力というパワーに強い関心を持った。


「100倍って想像以上にスゴイな。それにしても何で100? 

どうして10倍とか50倍とかじゃないの?」


「それは、あなたが100歳までがんばって生きたことに敬意を表して…」


最後まで言わせずに、“時はゲームのプレイ消費時間なり”との格言(どこの誰が作った格言だ!と言う声が聞こえそうだ)にしたがって、金髪の創造主に催促した。


「そりゃどうも。で、先ほどの質問にもどっちゃうけど、いつDKXの世界を創ってくれるの?」


「あなたとお話をしている間に創っちゃいましたわ!」


金髪の創造主は、100分の1秒の速度でウインクをした。


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