扉を設置する男


「君は、どこからやって来たのかな?」


「あの扉の向こうからです」


「あそこには壁しかないが」


「そのようですね」


どうしたものかと、その男は困っている。


「もしかすると、扉を設置すれば、元の場所に帰れるかもしれないです」


「そうか、それなら、今すぐに扉を設置させよう」


しばらくして、扉の設置作業が始まる。


「あれは、ダンボールでしょうか?」


「そうさ。ダンボールで作った扉さ。扉は扉だろ?」


「そうですね」


「前にも、あんたみたいな人が、急に現れてな。ゲンさんって人だったんだが、昔を思い出して、懐かしいよ」


「僕と同じく、扉からですか?」


「そうさ」


「不思議だと思わないんですか?」


「そうだね。まあそういうこともあるんだろうね」


扉の設置作業をしてる間、暇なので、何か仕事は無いか、その男に聞いてみる。


「せっかくなので、僕にも何か仕事はないですか?」


「そうだな。長包丁を使ったことはあるかい?」


「ないです」


「料理の経験は?」


「それなら少し」


「なら、大丈夫だ。長包丁を使って、材料を切れたら合格だ」


「分かりました。やってみます」


背の低い男についていき、肉と長包丁を差し出された。


「これを切ってみてくれ」


「分かりました」


「気をつけてな」


ゆっくりと包丁を動かし肉を切る。


「上手いじゃないか」


「ありがとうございます」


扉を設置してた男がやってくる。


「どうだね?」


「中々上手いです」


背の低い男が褒める。


「そうかい。なら、よかった」


「扉は設置できましたか?」


「まもなくだね」


「そうですか」


「しばらく、ここで待つと良い」


「はい、ご丁寧にありがとうございます」


「それじゃあ、作業を続けるんでな」


男は扉の設置作業に戻っていった。

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