小田原征伐 前編
第十一話 北方一路に臨む
北方戦線一路ゆく我ら地を踏み鳴らし関東を制圧せん
その真意と戦局はいかに
深謀は夜分の羽虫が如くただ小さく、小さく囁きかけるのみであった。
渦中の中にあってこの男、真田昌幸は何を思う。
「父上、北条方と内通しておられるのではなかったのですか?」
「.........あんな小童めの言うことなぞこれっぽちも信じてはおらぬ。ただ、『豊臣家の崩壊』はあり得ると踏んだだけじゃ。こちらの都合で進めているゆえ助ける道理など無かろうて。」
「..........」
北方戦線の発端は松井田城陥落から始まる。
上杉、前田、真田らが従軍する北方勢、もとい東山道方面軍3万5千は碓氷峠より進軍した。
敵将大道寺政繁とその兵約3千が猛烈な抵抗を示したものの、周囲の支城攻略の前に孤立し、風前の灯同然であった。
「おい、火の手が上がっているぞ!!」
「いよいよ序盤の戦も終わるか。。」
「少々時間もかかりましたが、兵の士気もうなぎのぼりの大勝利と言えましょうぞ。」
「まあ、代償もそれだけ大きかったが......。」
昌幸は傷ついた兵たちと疲れ果てた者たちを眺め、尋常でない規模の大戦であることを改めて自覚する。
満身創痍ながら彼らは昌幸が訪れたことに気がつくと、こちらへと向き帰り礼をとる。
どこまでも律儀と言えるもので、少数精鋭ならではの強者らしい面構えは昌幸の育て上げし遺産だ。
彼らに労いの言葉をかけたのち彼は軍議へと向かうのであった。
「さてはさては諸侯お集まりのことであるが、まずは松井田城陥落の儀、それがしが代わって感謝致す。」
「いやいや、この軍は屈強なる上杉軍なくては成り立たぬゆえにどっとこちらにかけてくだされ。」
「いやはや前田殿の素晴らしき采配あってこそでござる。」
一通り労いの言葉が交わされた後、いよいよ軍議は始まった。
「.........」
「して、松井田城を陥れたは良いが、上野をいかにして侵攻すべきであろうか。」
すると、上杉景勝の背後に控えていた近臣が一歩前へと踏み出す。
彼が今後の戦局について説明するらしい。
「直江山城守兼続にござりまする。今後の行軍について殿に代わりご説明いたす。
上野攻略は迅速に進めるべしとのことにより、ここから真っ先に東へと進軍して箕輪城、厩橋城(前橋城)を素早く攻略、敵方の要所を制圧し関東へと流れ込みます。」
「敵方の進軍はいかに。」
「はっ。そちらについてですが、先程降伏した松井田城主、大道寺政繁が案内するとのことであったゆえすべて聞いておりまする。」
「なんと申しておったか?」
「はっ。それが奇妙なことに北条方の援軍は一切なく、北条氏邦率いる守衛は鉢形城から一切動いておらず、上野はもはや素通り同然とのこと。」
「なにかあちらに異変の兆しありといったところか......。」
「まあよい。こちらも緒戦で被害を多く被ったゆえ、楽に侵攻ができそうだ。上野制圧後は武蔵国の制圧と言うわけだが、こちらの方がより難儀であろう。いかに。」
「はっ。そちらに関しては本軍に従軍しておる石田三成殿より文が届いておるゆえここで読み上げさせていただく。」
『北方緒戦の勝利殿下に代わってお祝い申し上げる。人馬の休養が最重要と心掛けているが、そうも待って折れぬ現状ゆえ、早急に上野攻略に取り掛かるべし。また武蔵に侵入した後は本軍より援護勢を二軍に分けて手配する故、敵方の要所河越城で集結のこと。
石田治部少輔三成』
「とのことゆえ、各方の奮戦にかかっていると言えましょう。」
「なるほど.......北のみならず南からも侵攻されてはひとたまりもなかろう。この戦において最上の策と心得た。」
「他に、、諸将より言いたいことは無いか?」
「...........」
「...........」
「...........」
「..........」
「..........」
結局、昌幸に発言権は与えられず軍議は解散となり、各々が次の進軍のために準備を始めた。
兼続らの言うとおり、今の上野は素通り同然でありまさに拍子抜けの戦況であった。
作者よりご報告
2週間ほど、
リアルが忙しいため、一週間で一話もしくは不定期更新となるため、ご迷惑をおかけしますが、ご了承頂けるとありがたいです。
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