第二十九話 小田原城粉砕大爆発
決戦編に行く前に、一つ時を戻したい。
...小田原城の惨劇を語らねばならない。
「父上!八王子城へ退いてくだされ!じきに砲撃は本丸にまで及ぶやもしれませぬ!!」
西方の戦線が崩壊した当初、氏直は小田原にいた。
西方で豊臣方を抑えきれないだろうことは承知の上であったが、予想外の勢いで進軍が進んでしまったのだ。
すでに秀吉暗殺、海軍撤退が決まった後ではあったが、本軍の実力は未だに計り知れなかった。
ここで氏直は第二の作戦を発動した。
南蛮
かつて氏直は豊臣政権との対立を予期し、小笠原諸島から南へと延びる、いわゆる第二列島線の開発に乗り出していた。
南の海は交易において困難を窮めたがとある人物の支援によって南蛮との交流が可能となり、大国スペインの航海術を学ぶことに成功した。
最悪の条件と引き換えに。
(点が多いけど、全部重要情報!!)
★
時は流れ...
「小田原へ総攻撃を仕掛けよ!時間は有限。全方位から徹底的に叩け!!」
秀次率いる本軍10万と諸勢5万は小田原を完全に包囲し、攻撃を開始していた。
笠懸山に陣城を築き、秀次は激戦を見守る。
力押し、数の暴力で押し寄せる我が勢いに、北条勢は果敢に対抗する。
「むむ?敵勢、思ったよりも少ない...??」
降り注ぐ鉛玉、兵どもの歓声が、城に立てられた旗の数よりも数段劣るように感じたのはそれからまもなくであった。
「この城に、敵総大将はいるのか...?」
秀次は額に汗を走らせる。時が一刻の猶予を争っていることを官兵衛から知らされたのはほんの数刻前。今は急ぎこの戦を終えねばならんのだ。
「ええい、小賢しい。急ぎ攻め立てよ!集中突破だ!!」
「ははっ!」
その判断が、本軍に大きな被害を与えたのである。
★
「見よ!あれに見えるは...南蛮船ではないか!?!?」
伊豆大島近海に伏せていた南蛮船が小田原の海岸にやってきたのである。
船には最新のカルバリン砲、カノン砲が搭載され、鉄砲を抱えた数多の傭兵が乗っている。
その南蛮船が...小田原への砲撃を開始した。
「待避は各所すんでいるか??南の3つの口からの待避を早急にせよ!!」
小田原城内部は騒然とした。数万の民草が混乱しただけではない。砲撃で城壁の一部は破砕し、南蛮勢が上陸を開始した。
「南蛮が、ついにここ日の本を食らいにやってきた...」
あるものはそう呟いたという。
同時に、激戦であった南の宮城野口などでは豊臣本軍にも甚大な被害が発生した。
南蛮軍は豊臣勢へも砲撃の雨を降らせた。その射程1.5里(6キロメートル)とも言われたカルバリン砲の猛威は笠懸山にも降り注ぎ、秀次にも危機が迫る。
「ななななななななんだあれは!?南蛮船...じゃと!?」
南蛮襲来とは、即ちここ日ノ本への侵略戦争の幕開けを意味する。
「これがかつて日ノ本を丸呑みすると謳われた南蛮の実力...」
諸将もまたこの惨状を目の当たりにし、絶句した。
ここで秀次はまた一つ、違和感に気づいた。
「家康が、、徹底して始めた!?」
東側の戦線を抑える徳川勢3万が離反し、東へと撤退を開始した。
★
「氏直は...行ったか。」
「ハハっ。」
一方本丸の氏政は、事のあらましを理解し、城中で家臣を呼び寄せていた。
「...南蛮の怒りを当家が負ってしまったようじゃ。氏直はそれを利用し、豊臣本軍をも駆逐しようと策を巡らしたらしい。」
ザワザワザワザワ
「!?!?」
氏政が旧臣らは音を立てて動揺を見せた。
「氏直様はそれを承知で退去なされるよう勧められたのではないのでしょうか!?」
「......」
氏政は口をつむいでしまった。
片手に茶碗を持ち、一杯の茶を注ぐ。
「ズズズズ......」
緊迫の現状と打って変わり沈黙が場を支配する。
「んん、やはり茶漬けは米が染み出した頃が最も旨い。」
「......」
「みな、わしが亡き氏康公より受けた𠮟責の数々を覚えておるか。」
「!?も、もちろんでございます。」
「わしが幾度かに分けて茶漬け食うたら、そのたびに叱責を受けたものであったわ。」
「......じゃがな、わしは氏康公にはなれなんだ。早く飯を食うことさえわしの肌には合わん。幾度かに分け、ゆっくり、ゆっくり、確実に喰らう事。わしはそうして今まで家名を存続させてきた。」
「......」
独白めいた氏政の独り言は続く。
「良いではないか。わしは今まで氏直に全てを任せたことが無かった。わしができることは外交だけで、もはやその役割すらも...。」
「......」
「ズズズ......うううむ。やはり旨い。」
その時、本丸に砲撃が直撃した。
後編~完~
(汁かけ飯の話を入れただけで氏政回は終わり......)
小田原征伐でまさかの豊臣秀吉暗殺成功!?ご先祖様の記憶を引き継いだ最強の五代目北条氏直が挑む!! 片平親綱っ @pesoconnyaku0258
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