第7話 決意の音が聞こえてしまった

あの危機の音を聞いた日から、少しが経ったある日のことだ。

俺は千葉駅に向かって歩いていた。

今日は、雫玖と遊ぶ約束をしている。


「いい遊び場があるから遊ばないか?」と言われたので遊ぶ事にした。

ちなみに何処に行くかは聞いてない。

あいつが行き先を言わなかったんだ。


「待たせたな」


「じゃあ、行くか」


そして俺らは電車に乗った。

電車を乗り継いで、とある所に着いた。


「ここって佐倉じゃないか。 何でここに?」


「さあな。 そのちっぽけな脳みそで考えてみろ」


「煽りやがって……」


俺は雫玖にそう言いながら、雫玖について行った。

どこに行くのか分からずじまいな俺は不安だった。


「着いたぞ」


雫玖が指を指した先に見えたのは、高校だった。

桜ヶ丘高等学校と書かれている。

そう、ここは瑞穂の高校だ。


「何で瑞穂の高校に来たんだよ……?」


「暇だから?」


「暇だからって来たって意味は無いだろ」


「そもそもお前がな、告白しないのが悪いんだよ」


その言葉を聞いた途端、俺はそこから逃げ出したくなった。

そんなことをする度胸がどこにも存在しないからだ。


「俺にそんな事をする度胸は無いんだよ」


「別に今ここでしろとは言ってないだろ」


「それはそうだけれど……」


俺らはその場を後にして、新町通りと呼ばれる通りを通った。

新町通りは賑やかだった。

人通りが多くて、佐倉の人が楽しそうだった。

しばらく歩いていると、向こう側に俺らに手を振る人が見える。


「あ、和樹と雫玖じゃん」


どうやら、瑞穂のようだった。

桜ヶ丘の制服を着ている。

とても綺麗だ。


「よう、瑞穂。 元気か?」


「元気よ」


笑顔でそう言う彼女が俺の目には映る。


その笑顔は俺にとって、綺麗だった。


そしてあの日とは違う、音が聞こえた。


決意の音が。



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