第5話 俺にとってのピンチ
平凡な夏休みも終わりを迎えて、残暑の厳しい季節になった。
俺は放課後の学校で一人、スマホを弄っている。
そんな俺の元に声が響いた。
「お前の好きな瑞穂は告られたらしいぞ――」
この言葉で俺は後ろを振り返った。
「告白しないで良いのかって言うつもりか?」
「そんな事を言っているわけじゃないぞ、落ち着かないか」
「何をお前は言うんだ、雫玖。 俺にとってのピンチなのに」
「怒らないでくれ」
俺はどうやら怒った声で言ってしまったようだ。
それも無理は無いかもしれない。
だって、俺の恋の音が鳴り終わりそうで怖いからだ。
「この恋の音が鳴り終わるのは突然なんだぞ…?」
「申し訳なかった。 アイスでも食って話をしないか?」
「別にいいが、余計な事は言わないでくれ」
「それはもちろん約束しよう」
そして俺らは学校を出て、コンビニに行ってアイスを買って
近くの公園で食べていた。
「何でお前は瑞穂が告白された事を知ってるんだよ?」
「告白した奴が本郷高だったからだよ」
「何でここの高校? 大多数の奴は瑞穂の事を知らないはずだけど?」
俺はそう言った。
私立本郷高校は松戸市に位置しているので、入学者は松戸市や、
鎌ヶ谷市方面から多く来ている。
なので、千葉市で、桜台中出身の人間では無ければ、千葉瑞穂の事を
知らない筈なのである。
「桜台の奴がしたんだね。 ったく懲りないねえ、あいつらも」
「あいつら何回もきてんのか?」
「みたいだよ? その度に降ってるんだって」
「理由ってなんだろうな」
「まあ、そいつの事が嫌いなんじゃない? そいつはウザイって奴で有名だし」
「ふーん…。 嫌いな奴に告白されるとかウザイな」
「そうだな」
俺らはそこで会話を終わらせて、家に帰った。
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