第3話 彼女と海で
何もする事のない日の夕方だった。
行く所も用事も無かったから家でゴロゴロしていた。
家でも何もすることがないので、スマホを部屋で弄りながら
アイスを食べることだけだった。
「涼しい部屋の中で食べるアイスは最高……」
俺は思わずこの至福の時間に呟いた。
中々にダラダラとした日常を過ごしているが、ちゃんと課題はやった。
そんな至福の時間を過ごす中でチャイムが鳴った。
家には俺しか居ないので、出る事にした。
「はーい」
面倒臭いという気持ちを隠しながらも扉を開ける。
するとそこには雫玖、玲奈、瑞穂の三人が居た。
「こんな良いお天気に何してたのよ」
「部屋でアイス食いながら、スマホを弄ってました」
俺は玲奈にそう言った。
まあ、確実に文句は言われるな。
「アイス食いながら、スマホ弄るんだったら、あんたはLINEを返しなさいよ」
「LINEしたの?」
「したわよ。 見てみなさいよ、あんたのスマホを」
そう言われて、俺はLINEを開いた。
そこには玲奈からのメッセージが五件、未読のままで溜まっていた。
「本当だわ」
「本当だわじゃないのよ、あんたね」
「まあまあ、喧嘩するなよ」
雫玖のその声で、俺らは喧嘩を辞めた。
まあ、瑞穂もいるから仕方ないから辞めたのだ。
「何で、俺の家にわざわざ?」
「和樹、一緒に海行こうよ」
白いワンピースを着た、瑞穂が俺にそう笑顔で言った。
俺は誘ってきてくれた事が少し嬉しかった。
「分かったよ」
俺はそう言って、準備のために家に3人を招き入れて部屋に行った。
動きやすい服に着替えて、スマホを手に取って部屋を出た。
「準備できたから行こうか」
そして家を後にして、海岸に向かった。
夕方の海岸は夕日が海に滲んでいて、綺麗だった。
こんな綺麗な場面を見るのは、久しぶりだった。
夕日が西の彼方へと落ちていくと、夜が来た。
俺らは花火をする事にした。
綺麗な線香花火に懐かしさを覚えながら俺らは花火をしていた。
瑞穂を見ると、彼女は満面の笑みを浮かべている。
その笑顔に俺は胸を締め付けられる。
こんな笑顔は今まで見た事がないからだ。
「綺麗だね、和樹」
「そうだな、瑞穂。 綺麗だけど切ない感じもするさ」
「まだまだ夏は終わらないから!」
またあの笑顔が俺の胸を締め付ける。
さっきから胸の高鳴りが鳴り止まない。
とても苦しい。
叶わない恋なはずなのに。
俺らはしばらく線香花火をして、遊んでいた。
海には俺らの他に誰も居なくて、静かだった。
昼間なら人が多いこの海岸は、夜になると静かになる。
それもまた、いい所なのかもしれない。
そして俺らは線香花火をして、打ち上げ花火をする事にした。
「行っくよ〜!」
瑞穂が火をつけて、離れた途端にそれは花を咲かせた。
七色の綺麗な火の花をだ。
俺らはそれを「綺麗」だなんて言いながら眺めていた。
その火の花はあっという間に散ってしまった。
そして俺らは、片付けて海岸から歩いていた。
俺らが住んでいるのは少し田舎の所だった。
田舎と言っても、コンビニやバス等は普通にあって大変では無いのだ。
歩いていると、空には星が出ていた。
「見てっ! 星が出てるよ!」
笑顔で夜の星に彼女は指を差した。
その笑顔は本当に嬉しそうだった。
俺らはそれを「綺麗だな」って言って、空を見上げた。
この時間がずっと続けていけば良いのにだなんて思ったのは、秘密だ。
そして俺らは途中の道で別れて、帰った。
家に帰ると、俺は疲れて眠ってしまった。
そのくらい幸せな日だった。
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