第2話 文化祭準備
まだ暑さが続く8月の夏の今日。
俺は8月中旬に行われる文化祭の為に文化祭準備をしていた。
久々に集まったからかクラスメイトの背が大きく見えた。
「なあ、雫玖。 何やるんだっけ?」
「ゲームコーナー」
「ああ、そうだったな…」
「お前、元気ねえじゃん、少し休んでこい」
「そうか…? まあ休んでくるよ」
そう言って俺は高校の中庭に行った。
俺の高校は私立だから、中庭が存在する。
中庭にはベンチがあったのでそこに座っていた。
そして俺は手に持っていたポカリを飲んだ。
その味はどこか苦かった。
「元気出せよ、和樹」
そう雫玖が俺に言うと、共に冷たい物が頬に当たる。
「冷たっ!」
「何でそんなに元気ないんだよ。 いつもの和樹じゃないぞ」
雫玖が笑顔で俺にそう言った。
「今日はいつもの俺でいられなさそうだよ」
「また、あの頃の事思い出したか?」
「そうじゃないんだ。 でもな…」
「当ててやる。 お前、千葉さんに恋してるんだろ?」
「正しくその通りです」
「まあ、千葉さんなら好きになってもおかしくないな」
「何でそう思うのさ」
「全てが綺麗だからだよ。 所作も礼儀も何もかも」
確かに言われてみればそうだ。
剣道部で一緒だった時も、中学時代もあの子は何時も凛々しかった。
落ち着いていて、容姿端麗で、頭も良かった。
そんな千葉さんに恋をしている生徒は多かった。
でも、告白されても彼女は拒否していたみたいだ。
何でかは分からないが。
「容姿端麗、頭脳明晰な彼女だからね。 恋する奴も多かったな」
「だろ? 高校でも告白されてるんだろうなあ」
「それは否めない」
「まあ、頑張れよ」
「ありがとう」
俺はそう笑う雫玖にお礼を言った。
そして俺らはベンチから立って教室に戻ることにした。
さっきより気分は良くなって、俺は徐々に元気になっていった。
「何してたのよ、鈴木と石井は」
同じクラスの白石 玲奈がそう声をかけてきた。
白石も俺と雫玖と同じ中学だった。
けれども、同じクラスなどに1回もなったことは無い。
同じ部活でも無かった。
「俺は和樹の元気が無いから、励ましてただけだぞ」
雫玖は笑顔でそう白石に言う。
「申し訳なかった」
俺は二人にそう謝るしかできなかった。
雫玖の事は怖くないのだけど、白石の事は怖かった。
同じクラスになった事は無いけど、あの頃の事は学年中に知られている
様な気がして怖かった。
なんて言われているかも分からないし、いつ蒸し返されるか
何て分からなかったからだ。
その後ちゃんと文化祭準備をして俺らは解散した。
いつもなら雫玖と一緒に帰るけれど、今日はやめた。
一緒に帰りたい気分ではなかったから。
疲れた。
家に帰ったら、ゆっくりしようかな。
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