IFルート 城ヶ崎美咲編
第1話 城ヶ崎美咲は相容れない
「颯太くん、私は君のことが好きだ」
ついに言ってしまった。
かれこれ四年近く続いてきた片思い。
私が颯太くんのことを好きになったのは、中学二年生の頃だった。
真面目を言われてきて、文武両道を目指していた。
親が厳しいというわけでもないが、結果を残せば褒めてくれる。
多分それが大きな理由だろうけど、勉強に運動に……何もかも努力をしてきたと思っている。
そして気が付くと、周りから大人びているなんて思われるようになってしまっていた。
そんな時、颯太くんと出会った。
当時はただの後輩で……何なら後輩と言っても部活も違っていて関わりもなかった。
共通点と言えば同じ体育館で部活をすることがあるくらいだ。
名前はうろ覚えで、男子バスケ部にこんな子もいたなと思うくらい。
颯太くんと初めて話したのは、ほんの気まぐれがきっかけだった。
「練習熱心だね」
「……どうも」
部活後、残ってシュート練習をして、息を切らしていた彼に話しかける。
最初はダルそうに寝そべっていたけど、声をかけると彼は勢いよく飛び起きた。
「私は女子バレー部の城ケ崎美咲だ」
「知ってます。有名ですし。……俺は男子バスケ部の青木颯太です」
青木くん……か。
言われてみると男子バスケ部の部員が呼んでいたような気がする。
聞いたことがあるかなというくらいで、うろ覚えだ。
「それで、青木くんはそんなにも練習して、何か目標とかあったりするの?」
「唐突ですね。特に目標とかはないですけど、バスケが好きで試合に出たいだけですよ。そのために上手くなりたいってところでしょうか?」
「そうなんだ」
真面目にやっていれば、どうにかなる話だなと思ってしまった。
どの競技も限られた人数しか出られないため、みんながみんな努力をしても出られない人が出てくるのはわかっている。
ただ、中学校の部活は、遊び感覚でやる人もいれば本気でやる人もいる。
よほどのことがない限り、本気でやっていればレギュラーなんて取れると思っていた。
年功序列とかもあるけど、少なくとも同級生よりはチャンスは多いだろう……と。
「……逆に聞きたいんですけど、城ケ崎先輩は何のために部活とか勉強とかしてるんですか?」
「……どういうことかな?」
「俺たち一年生でも、城ケ崎先輩が有名人なことは知っているんです。完璧超人だって。……何のためにそこまでしてるんですか?」
その答えは完結だ。
――褒められたい。
たった一言それだけだったけど、私の口からその言葉は出なかった。
恥ずかしいからということもあるけど、それだけじゃない。
改めて考えてみると、
青木くんにそう言われて、私は初めて何のために部活や勉強をしているのかということを考えてしまった。
「……城ケ崎先輩?」
「……あっ、ええと、なんだっけ?」
「……何でもないです。練習に戻ろうと思うので、そろそろいいですか?」
「ああ、うん。邪魔して悪かった」
訝し気な目線を向けてくる彼に、私はあからさまに流してしまった。
答えづらいことに気が付き、青木くんも深くは突っ込まないでくれた。
そこには感謝する。
しかし、この時の私は複雑な気持ちで、まるで今までの自分を否定でもされたかのような気持ちになっていた。
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