第172話 本宮花音は行く末に戸惑う
私はこのままでいいのだろうか。
前まではこのままでいいと思っていたけど、最近はそんなことを考えている。
共通テストの結果はそこそこで、志望していた城明大学の理工学部数学科には届く範囲だった。
お父さんからは良い大学に行くように言われていたけど、颯太くんと話したその日からは特に口出しをされない。今まで一人だった私のことを心配していただけで、今は前よりも安心しているかららしい。
そのため、頑張っているアピールのために受ける名護大学も一応受けるけど、受かったとしても行くつもりはない。
どちらの大学にしても、私のやりたいことでもなかった。
かと言って、これがやりたいということもなかった私は、お父さんが認めてくれると思った選択肢の中から選んだだけだった。
そんな私にも、少しだけ興味が湧いていることがあった。
まだ不確定で、確実じゃないその進路に向かっていいのか……そんな悩みもある。
「……でも、やってみないとわからないよね?」
自問自答するように私はつぶやいた。
そして、その進路に悩む理由はもう一つあった。
「颯太くんは、本当にいつまでも私と一緒にいてくれるのかな?」
自分で言うのもなんだけど、かなりめんどくさい人間だ。
まず、普通の家庭というものを知らない。私の家は周りから見ても、明らかに特殊な部類だった。
もちろん他にも大変な人はいるけど、よく言う
そして、性格だっていいわけじゃない。
颯太くんはそんな私もいいと言ってくれるけど、私より性格がいい人はいる。
双葉ちゃんだってそうだし、元会長さんもそう。夏海ちゃんや綾瀬さんもいる。
モテている颯太くんが私を選んでくれたことは嬉しいし、不安だからと交友関係を狭めたくもない。颯太くんにとって大切な繋がりで、それは私にとっても一緒だから。
でもやっぱり、私でいいのかなって思ってしまうときはある。
――どうすればいいのかなぁ……?
このままずっと一緒にいれるのかわからない不安もあるけど、一緒にいるためには多くの時間を過ごすのもいいかもしれない。
どちらを決めるにしても、あとから受験し直すことはできない。できても一年後だった。
それを考えると、とりあえずは受けるだけ受ければいいのかもしれない。
私は携帯を手に取ると、電話をかけた。
『……花音か。どうかしたか?』
「……お願いがあります。お父さん」
『なんだ?』
受験ことを決めるのに、私の独断では決めれない。
結局お金を出してもらうのはお父さんで、申し訳ないと思っていても頼むしかなかった。
「もう一つ受験したいところがあるんですけど――」
私は受験したい大学と学部、そして理由を告げる。
すでに受験している試験の合否が決定した後でも、受けられる日程の大学と学科だ。
出願するのも先だけど、相談とお願いの意味を込めて私はお父さんに話をした。
『後悔しないように、花音の好きにすればいい』
お父さんはそう言うと電話を切った。
一見は冷たいように聞こえるその言葉も、今の私なら本当の意味がわかる。
これはお父さんなりの許可だということ。
そっけなく冷たくても、実は私のことを考えてくれるのだと知った。
「……よし、頑張るぞ」
今更かもしれないけど、私は今まで考えていた進路とは
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