第48話 思わぬ依頼

 ブラックウルフに襲われた生徒たちは順調に回復して行った。

生徒たちの保護者たちからも感謝され、特医救命の存在意義も徐々に周りから認められて来た。


 そんな中、私の元に予想外の依頼が飛び込んでくる事になる。


「急に呼び出してしまってすまないね」

「いえ、お気になさらず」


 私は院長に呼ばれていた。


「まあ、座って」

「失礼します」


 院長の対面のソファーに腰を下ろす。


「サクラ先生は死因救命センターというのはご存じかな?」

「ええ、知っています」


 死因究明センターとは、不自然な死を遂げた方の死因を究明する為に置かれた施設である。


 殺人、事故、自殺、様々な死の死因究明を行う。

世界的にみても珍しい施設である。


「死因究明センターが何か?」

「実は、そこのセンター長から話があってだな。自殺のご遺体の依頼解剖があったらしくてな」


 依頼解剖とは、本来であれば解剖の必要性がないご遺体をご遺族の依頼で解剖し、死因究明を行う事である。


「サクラ先生をご指名なんだそうだ」

「え!?」


 私は死因究明の専門では無い。

生きている方を診るのが私の専門である。


「でも、サクラ先生は解剖医の資格も持っているだろう?」

「ええ、確かに持っていますけど」


 医師免許を取得した後に解剖医の資格も取得した。

解剖医になるには医師免許が必須なのである。


「サクラ先生に死因究明をして欲しいとご遺族からの強い要望なんだよ。ご遺族は自殺に不信感を抱いているらしい」


 私の名前は世間に広がっている。

だからとはいえ、まさか死因究明の依頼が舞い込むとは思いもしなかった。


 亡くなった方の最期の声を聞き、それを届くはずだった人に届けてあげるのが死因究明に携わる人間の使命だ。


 そんな解剖医の師匠の言葉を思い出した。


「分かりました。私ゆ出来る所まではやってみます」

「ありがとう。ここに向かってくれ。私の紹介だと言えば分かるはずだ」


 院長は死因究明センターの住所が書かれた紙を渡してくれた。


「ありがとうございます。行ってきます」

「いってらっしゃい」


 院長に見送られ、私は死因究明センターへと向かう。

私の勤めている病院からそう遠くはない。

歩いても数十分の距離である。


「ここですね」


 センターの前に到着すると、中に入り、受付の女性へ声をかける。


「テオバルト院長の紹介のサクラと申します。センター長とお会いしたいのですが」

「かしこまりました。確認致しますので、少々お待ち下さい」


 そして、待つ事数分で確認が取れたらしい。


「サクラ様、お待たせ致しました。ご安心致しますので、こちらへどうぞ」


 受付嬢の案内で私はセンターの応接間へと通される。

そこでさらに数分1人で待っていると、再び応接間の扉が開いた。

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