第47話 そして、解決へ

 これでまだ見つかっていない生徒は六人となった。


 魔力の暴走が治ったことを確認すると、騎士団に搬送を任せる。

きちんとした治療を受けたら彼女は元通り魔法を使えることになるだろう。


 捜索範囲を広げているとはいえ、こうしている間にも時間は過ぎていく。


「神経毒の効果を考えるとそろそろ見つけないとマズイですね」


 既に二時間以上が経過している。

神経毒にやられると呼吸困難を起こす可能性もある。


 アナフィラキシーショックというやつである。

同じ神経毒に2回以上やられることでその可能性は一気に高まる。


「こちら側がまだ捜索していない範囲です!」


 先頭を行くライムントさんが言った。


「急ぎましょう」


 しばらく行った所に少し開けた場所があった。

そこに六人の生徒が倒れているのが見えた。


「ジンさん、トリアージをお願いします。重症な患者さんから順番に処置します」

「了解!」

「ネネさんがサポートに入ってください!」

「わかりました」


 私は二人に素早く指示をする。

その時、私たちの後ろにブラックウルフの群れが現れた。


「ここは私に任せてください。サクラ先生たちは治療を優先してください」


 ライムントはそう言うと腰に刺した剣を抜いた。


「お気をつけて」


 それだけ言うと私は治療にあたる。

それは、私がライムントさんのことを信頼しているからこそ出た言葉だった。


「お待たせー。医師のサクラと言います。どこが痛いかな?」


 生徒は表情を歪ませて右足を指差した。


「ちょっと診るね」


 右足が腫れている。

骨折しているのだろう。


「固定するね。ちょっと痛いけど頑張るよー」


 私は折れた足を固定する。


「サクラ先生、こっちの生徒たちは軽症のようです」

「わかりました。すぐに搬送しましょう」


 軽症とはいえ、病院に搬送する必要があるだろう。


「それは、我々の仕事ですね」


 そこにはライムント率いる第二騎士団の姿があった。

ライムントさんにとって、ブラックウルフなど相手にもならなかったようである。


「みなさん、よろしくお願いします」

「いいんですよ。サクラ先生には命を助けられた恩がありますし、副団長が散々世話になってますから」


 団員の一人が言った言葉に他の団員も頷いた。


「よーし、お前ら運ぶぞ」

「30分以内にお願いします」

「任せてください」


 騎士団の団員は生徒たちを担架に乗せると搬送を始めた。


「私たちも戻りましょうか」

「そうですね」


 ライムントさんと共に私たちは森を抜ける。


「室長、お疲れ様でした」

「いやぁ、今日も見事な処置でした」


 森を抜けた所でコーム先生とエリカ先生に声をかけられる。


「みなさんもお疲れ様でした。患者さんはうちの病院に?」

「はい、同じ病院がいいだろうということで全員うちの病院に搬送しました」

「わかりました。じゃあ、帰りますか」

「ですね」


 私たちは病院に戻ることにした。

後処理は騎士団の人たちがやってくれるという。


「お疲れ様でした!」


 騎士団がサクラたちに敬礼する。


「相変わらず、なんというか規格外ですね。あの方は」

「もう、驚くのも疲れたよ俺は」


 判断力、行動力、医療技術どれをとってもサクラの腕は一流と評価されるものだった。

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