第42話 騎士として(ライムント視点)
私は王国の貴族の三男として生まれた。
三男の私は家を継ぐ可能性は限りなく低い。
事実、家は長男が継いだ。
次男は商業ギルドの副ギルド長をやっている。
貴族出身のものはそういった重役に就くことが多い。
次男は若干29歳の若さにして商業ギルドの副ギルド長まで上り詰めたのだから大したものだと思うし、私はそんな兄たちを誇りに思っていた。
「お前は何かやりたいことはあるか?」
16の誕生日に父に聞かれた。
父は伯爵位を持つ貴族である。
「誰かを守る仕事がしたいです」
私は父に申し入れた。
「なら、王宮騎士というのはどうだ?」
王宮騎士、それは国王陛下に忠誠を誓い、国家のために働く仕事である。
とても誇り高い職だと思う。
「分かった。では、お前を王宮騎士に推薦しよう。しかし、王宮騎士は実力社会だから、貴族だからって関係ないぞ」
「承知しております」
そして、私はその1年後に王宮騎士へと入団した。
元々、剣は得意だった私は、国王陛下や当時の団長など多くの人の支えがあって順調に騎士団の中で出世して行った。
そして、3年という驚異的なスピードで第二騎士団の副騎士団長を任せられるようになった。
そんな時だ。
私は任務で魔獣の討伐をしている時に大怪我を負った。
とてもポーションなどで回復できるものではないと思う。
「私も焼きが回ったか」
死を覚悟しようとした時、私の視界の端に綺麗な桜色の髪の少女が現れた。
その少女は負傷した騎士たちを完全に回復させてしまった。
誰もが諦めようとしたその傷を彼女はたった一人で完全に回復させたのだ。
私は、とんでもない少女に出会ってしまったと思った。
回復だけさせると、彼女は先を急ぐと出発してしまった。
しかし、どうしてもちゃんとしたお礼をしたかった私は国王陛下に頼み込んだ。
「桜色の髪の凄腕の回復術師を知りませんか?」
桜色の髪はこの国では珍しい。
それに加え、あの凄腕の医療技術と回復魔法、陛下なら何か知っているのではないかと思った。
「桜色の髪か……」
陛下は含んだように言うと、ニヤッと笑った。
「そんな凄腕は私はこの世界で一人しか知らないな」
「一人ですか! その方は何者なんでしょうか?」
「オーラル子爵家長女、サクラ・オーラル氏。癒しの宮廷魔術師だよ」
「え!?」
確か、今は癒しの宮廷魔術師のポストは空きポストとなっている。
前任の魔術師が高齢の為に引退したのである。
「では、彼女が……」
「ああ、新しい癒しの宮廷魔術師だ」
そこから、私はサクラ・オーラルという女性を間近で見てきた。
彼女はいつも誰かの命を救う事しか考えていない。
「助けられるはずの命が助けられないのが一番辛い。だから、目の前で消えかかっている命があったら全力で助ける。それが医者です」
彼女はいつもそういって医療行為に臨んでいる。
私はそんな姿を見て惹かれている部分があった。
それは、同じ誰かを守る信念を掲げた同志としてか、一人の女性としてかは分からないし、両方かもしれない。
私はできるだけサクラさんの力になろうと決めた。
そんな姿を見て、『なぜ彼女をそこまで信用して助けになろうとするのか』と聞かれることが多い。
特に、後輩の騎士からはよく聞かれる。
そう聞かれた時、私の答えはいつも同じ。
「返しきれない程の恩があるから」
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