第41話 気道熱傷

 大きな音で地面が揺れたように感じた。

やはり、二次災害が起こってしまったようだ。


「ジンさん、この方お願いします。30分以内に搬送するように伝えて下さい」

「分かりました!」


 それだけ伝えると、私は医療テントから出る。

外に出ると、先程爆発した建物と同じ建物が更に大きく崩れて落ちていた。


「ライムントさん、被害状況は?」


 爆発現場のすぐ近くに立っていたライムントさんに尋ねる。

幸い、ライムントさん自身は問題ないようであった。


「まだ中に何人か取り残されています。うちの騎士も救助に当たっていたので巻き込まれているかと」

「救出を急ぎましょう。爆発したという事はまだ可燃性ガスが出ているという事ですね」

「そうなります。救出の方は任せて下さい」

「分かりました。私は病床を確保してきます」


 そう言うと私はその場を離れる。


「コーム先生、これからまた患者さんが増えます。対応出来ますか?」

「大丈夫です。まだいけます」

「ジンさん、医療テントの病床を増やすように伝えて下さい」

「了解!」


 私はそれぞれに指示を出す。

すると、爆発現場から複数の患者さんが運び込まれてきた。


 中には騎士服を身にまとった人もいる。

救助中に巻き込まれた騎士団の人たちだろう。


「コーム先生、気道熱傷に注意して下さい」

「分かりました」


 気道熱傷とは火災は爆発などによって、高温の煙や水蒸気、有毒ガスを吸い込むことによって生じる呼吸器系の障害の総称である。

このような現場では、起動熱傷の患者さんが非常に多く発生する。


「ここ、お願いします」


 そう言うと、私はその場をコーム先生に任せる。

そして、私は救出活動が行われている現場へと戻る。


「意識がある方は医療テントに運んでください。重症の患者さんから近隣の病院に搬送します」

「了解です」


 なんとか騎士に支えられて歩ける人はそのまま医療テントでジンさんとコームさんに処置をお願いする。

看護師のネネとローズがそちらにサポートに入っている。


「サクラ先生、こいつをお願いします!」


 爆発現場の中から騎士が一人の男性を助け出した。

同じ騎士服を着ているということはこの人も騎士団の人間なんだろう。


「すぐに処置します」


 私は、すぐに処置しないと危険であると判断した。


「そこのそこのベッドに寝かせてください」


 新規に設置された医療テントに負傷した騎士を寝かせる。

意識は僅かにあるが、すぐに診ないと命に関わる。


「やっぱり気道熱傷ですね」


 すすの付着具合や粘膜の様子、腫れなどを見ると気道熱傷であることが確認できた。


「このままだと気道が閉塞する可能性がありますね。挿管しましょう。ステファさん、チューブお願いします」

「分かりました」


 気管挿管とは親指かそれよりもやや太いチューブを口から気道に、深さにすると20センチから25センチほど挿入して留置する治療である。

これにより、気道粘膜が晴れても挿入したチューブにより気道が確保されるのだ。


「チューブです」

「ありがとう」


 私はそのチューブを受け取ると、喉頭鏡を使って口からチューブを入れた。


「ステファさん、ここで固定してください」

「了解です」

「すぐに搬送しましょう。この方も30分以内に搬送できる所にお願いします」

「分かりました」


 こうして、治療を終えた私は医療テントから出た。




 

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