第38話 出動要請

 私は特別医療事案救急救命室に向かっている。

王立中央病院にはもちろん、普通の救命センターがある。

今回はそれに加えてさらに機動性を重視した特別医療事案救急救命室が設置されたようだ。


 特別医療事案救急救命室は長いので『特医救命』と略されるそうだ。


 そんなこんなで、私は一階の東側にある特医救命の待機室へと到着した。


「さすがは、王都1の病院ですね」


 必要な医療道具は全て揃っている。

更衣室も併設されているし、白衣の予備などの備品も揃っている。


「皆さん、室長のご到着ですよ」


 その時、聞き覚えのある声が聞こえた。


「お久しぶりです。サクラ室長」

「ジンさん、久しぶりになっちゃいましたね」


 私が王都を離れて風土病の治療に行っていたので、ジンとはしばらく顔を合わせていなかった。


「これから、よろしくお願いします」

「こちらこそです。一緒に理想の医療を作って行きましょう」


 私はジンと握手を交わした。


「医師のコームと言います。室長について行けるよう、努力します」

「看護師のネネです」

「同じく、ステファです」

「ローズです。よろしくお願いします」


 それぞれ簡単に自己紹介をしてくれる。

医師は私以外は男性で、看護師は全員女性だった。


「サクラ・オーラルです。ここの室長を務めます。よろしくお願いします」


 私は全員と軽く握手を交わす。

確かに、この人数で救命処置を行うには限界がありそうだ。

増員を急いでもらうこととしよう。


「今はたった6人のチームで王都全体の救命医療をカバーしなければいけません。そのために、皆さんのお力を貸してください」


 そう言って私は軽く頭を下げる。


「もちろんですよ」

「そのつもりでここに来ています」

「みんな、命を救いたいと思っています」


 それぞれ、このシステムに対してとても好意的なようである。


「ありがとうございます。まあ、私たちが出動するような事態が無いことが理想ですけどね」


 その時、私たちの元に一件の連絡が入った。


『出動要請。大規模爆発。原因不明』


「行きましょう! 医療セットと蘇生セット、それからポーションの類も持って行きましょう」

「「「はい!」」」


 全員素早く準備をすると、そのまま病院を飛び出した。

現場までは馬車で飛ばせば10分弱で到着できる距離だった。


「状況に合わせて指示を出します。私の指示が全てではないので、各自判断してもらって構いません」


 私は馬車の中で言った。


「了解です」


 そして約10分後、私たちは現場に到着した。

そこですでに救助活動が行われている。

主には国の騎士団たちが動員されているようだ。


「酷いですね……」


 パッと見ただけでも20人以上の負傷者がいるように見える。


「ここの指揮は誰が?」


 私は近くに居た騎士の一人に聞いた。


「一応、ライムント副団長ですが、先生方が到着されてからはサクラ先生の指示に従うようにとの指示を受けております」

「分かりました。ありがとうございます」


 おそらく、私が自由に動けるように配慮してくれたのだろう。


「ジンさんは手前左の患者さんのトリアージ、ネネさん補助に入ってください」

「了解」

「分かりました」


「コーム先生は手前右側をお願いします。ローズさんがサポートについてください」

「了解です!」


「ステファさんは私についてください。私は奥の患者さんを診ます。重症の方から優先して搬送します」

「「「はい!」」」



 

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