第15話 白衣の責任

 私は救護テントテントの中に入った。

まだ怪我人は多くは無い。

軽症者しかいないのが不幸中の幸いではあった。


 そして、そこには私と同じく白衣をきた男性がいた。

腕には腕章をつけている。


 その男性は私に気づくと近づいてきた。


「サクラさんですね。私、王国の騎士団に従事している医師のジンと申します」

「医師のサクラです。よろしくお願いします」

「はい、よろしくお願いします。腕のいい医師と聞いてますよ。サクラさんはこちらから向こうの患者さんを診てもらえますか?」

「分かりました」


 私は隣の救護テントに入った。

そこにも比較的軽症者しかいなかった。


「回復させますね」


 この程度の傷ならそのまま癒しの魔法を使っても問題はなかった。


「よし、これで全員ですね」


 数分で私は全員を回復し終えた。

動けるようになった騎士や冒険者たちは再び戦闘に向かって行った。

その姿は素直にかっこいいと思ってしまう。


「サクラさん、ちょっと来てもらってもいいですか!」

 

 私の元に慌てた様子のジンがやって来た。


「分かりました」

「私では少々手に負えない患者さんでして」


 私っはジンと共に中央にある救護テントに入った。


「こちらです」


 ジンの行った先にはベッドで横になっている赤髪の男性が居た。

左肩から胸にかけて大きな傷があった。

そこから大量出血している。


「医師のサクラと言います。聞こえますかー!!」


 反応が無い。

呼吸は浅く、脈も取れなくなって来ている。


「服切りますね」


 私は傷口をみる為にハサミで袖の部分を切った。


「鉄クズですね」


 ライトを当てるとキラキラと光るものがあった。

おそらく、鎧ごとやられたのだろう。

その破片が傷口付近に付いているのだろう。


 このままでは回復の魔法はかけらないし、細菌が入る可能性もある。


「消毒します」


 私は消毒液で傷口を消毒する。

そこから、ピンセットを使って鎧の破片を取り除く。


「回復させます」


 私は傷口に集中するように回復魔法をかけていく。

すると、みるみるうちに傷は塞がっていった。


「すごい……」


 後ろで見ていたジンは関心の目を向けていた。


「ついでに血も増やしておきましょう」


 魔法で増血させておいた。

回復魔法だけでは血液を増やすことはできないので、血液を増やすには別の魔法が必要なのである。


 全ての処置が終わると呼吸が安定した。

脈もきちんと振るうようになった。


「生きてる……」


 赤髪の男性は目を覚ますと涙を浮かべながら言った。

こうしてみると騎士団長たちとは違ったタイプのイケメンだなと思う。

この世界にはイケメンしかいないのだろうか。


「まだ、無理してはいけませんよ。相当深い傷を負ってましたから」

「ありがとう。本当にありがとう」


 その男性は私の手を取って口にした。


 そして、私が治療を終えたタイミングで赤龍が討伐されたという情報が入った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る