第16話 白衣の責任

 私は軽症者を含めて私は全員を治療し終えた。

幸いなことに死者はまだ見ていない。


 赤龍が討伐されたという現場まで行くと、騎士たちが後片付けをしていた。

その指揮を取っているのがライムント副騎士団長であった。


「お疲れ様です」


 私はライムントさんの近くまで行くと声をかけた。


「サクラさん。お疲れ様です。無事でよかったです」

「私は、前線には立ってないですから大丈夫ですよ」


 ライムントさんはちょっと心配しすぎでは無いだろうか。


「ライムントさんも無事で何よりです」


 多少、服や鎧に汚れや擦り傷などはあるものの大きな損傷は無いらしい。


「私は、大丈夫です。しかし……」


 ライムントは少し目を伏せた。

その時、担架が私の少し横を通りすぎた。


 顔には白い布がかけられている。

そして、白い担架は血液が滲んでいた。


 それを見て、私は心を痛めた。

“また“、間に合わなかった……


「見るな」


 私はライムントに抱き寄せられた。

後頭部にはライムントの手がポンと置かれた。


「あなたは、生きている者だけを見てください。彼は、即死でした。サクラさんが気にやむことは無い」

「はい……」


 彼も少し前までは生きていたのだ。

しかし、死者を蘇生することはできない。

死者を蘇生する魔術も無いことは無いのだが、それは禁忌の魔術とされている。


「まだ救護テントに運べていないだけで怪我をしている者もいます。お疲れでしょうが、診ていただけませんか?」

「分かりました!」


 私は、まだ診ていない患者さんを診る。


「医師のサクラと言います。ちょっとみせてもらってもいいですか?」

「は、はい」

「立たなくて大丈夫ですよ。そこに座ってください」


 私は患者さんを座らせた。


「どこが痛いですか?」

「あ、足が……」


 その男性は右足を指差しながら言った。


「ちょっと触りますね」


 そう言うと私は男性の右足を膝から下に向けて触診していく」


「うぅ!!」


 騎士服に身を包んだ男性は苦痛に顔を歪ませた。


「骨折していますね」


 足の骨が完全に骨折していた。

しかし、骨折だけなら回復魔法で何とかすることができる。


「すぐ治しますからね」


 私は骨折箇所を修復するイメージで回復魔法をかけて行く。


「痛みが、引きました」


 回復を終えると男性は感動した様子で言った。


「よかったです。お大事にしてくださいね」

 

 私は微笑みを浮かべて口にした。


「本当にありがとうございます!!」


 そこから、私は軽症者を含めて20人ほどを治療した。


「サクラさん。お疲れ様でした」

「お疲れ様です」


 ライムントさんの方も赤龍の後片付けが終わったようであった。


「みんな、サクラさんに感謝していますよ。私からも感謝を」


 そう言うと、ライムントさんは私の頭にポンと優しく手を置いた。


「では、戻りましょうか」

「はい!」


 私たちは赤龍によって破壊された村を見に行くことにした。


 

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