ケモナーの試練の塔!1

「うーん……いいスキルないかなー」


翌日、学校も終わり、家に戻ったかすみは早速ゲームにダイブ! ……するわけでもなく、PC画面に張り付いていた。

 今彼女が見ているのは情報掲示板だ、色々なイベントはスキルの習得方法が書かれている。


「うーん……あんまり面白そうなスキルないなー……仕方ない、あっちで探そ」


掲示板に頼ることを諦めたかすみはちゃっちゃとログインの準備をはじめる。


「それじゃ今日もモフモフの旅、レッツゴー!」


そして大きな声で掛け声をしながらゲームの中へと潜り込んで行った。潜る直前に母の声でうるさい!と聞こえたのはおそらく気のせいだろう。



「アリスは……っともうログインしてるんだ、早いなー。リーフもログインしてるじゃん。はっやいなー。召喚サモンポチ!」


フロスは移動のためにポチを召喚し、その上に跨る。


「それじゃあレッツゴー! ……あれ? ポチ?」


フロスの掛け声にポチは動かずにただ止まっているだけだった。


「ポチ? おーい、ポチさーん?」


目の前で手を振ってみるも反応がない。


「あれ? おっかしいなー……バグ? もしかして町の中だと動けなくなったとか?」


試しに一度ポチを戻し、もう一度召喚する。


「やった今度は動いた! さあ! 今度こそレッツゴー!」


「ギャウッ!! グルル……」


しかしポチは一向に進もうとしない、それどころかフロスのことを振り落とし何故か威嚇をし始めた。


「え? あの……ポチさん……?」


「ガウッ!!」


そして何故かフロスに襲いかかって来たのだ。


「ポチ!? 何すんのよ! あ……でもちょっといいかも……新感覚……はっ! 危ない、なんか新しい扉を開きそうになった気がする」


フロスは何かいけないものに呼ばれたような錯覚を覚えた。it〜それを開けたら終わり〜と言う感じである。


「あの……ポチさん? そうだきびだんご……!」


もしかしたらきびだんごを上げればよくなるかも……そう考えてポチの口にきびだんごを放り込む。

 するとどうだろう、先ほどまでフロスに噛み付いていたポチが尻尾を振りながら顔を舐め回すようになった。


「やっぱりきびだんごだ! ポチは調子がいい奴だなー! でもそんなポチも好きだよ、だからモフモフさせて?」


ポチに許可も取らずモフモフするフロス。


「噛みつかれたんだしこれくらいはいいよね……!」


誰に語っているのかは知らないがそんな言い訳をしていた。


「あ……もしかしてバスクとリルも同じなのかな? 召喚サモンリル!」


リルを召喚する、すると案の定襲いかかって来た。


「やっぱりか……ほら、きびだんごだよ」


ポチの時と同じ容量でリルにもきびだんごをプレゼントする。口に入り飲み込んだ途端、態度が一変し、その大きい体を擦り付けて来た。


「調子がいい奴だなー、そんなリルも可愛いよ……! はぅ……可愛い……っ! 危ない……尊死するところだった」


危うく尊死しかけたフロスはバスクも呼び出して同じように対処する。


「はぁ……はぁ……新しい扉開きかけた……」


地面にしゃがみ込み息を整えていると後ろから足音が聞こえた。


「フロス? あんた何やってんの」


「あ、アリス聞いてよー!」


ちょうどいいところへ来たアリスに事の顛末を伝えて、新しい扉を開きかけたことも伝える。


「それでね……アリス……私を叩いてくれない!?」


「あんた……開きかけたじゃなくて完全に開いてるじゃん……やっぱバカでしょ」


「んな!? 馬鹿とは失礼ね馬鹿とは! 馬鹿って言う方が馬鹿なんだよ!」


「はいはい、とりあえず一狩り行っとく?」


「うん! 一狩りいこーっ!」


「あ、それはそうとアプデ情報見た?」


唐突に話題を変えるアリス。少し不思議に思いながらも首を振り見てないと言う旨を伝える。


「新要素追加だってさー! 試練の塔? みたいな感じのやつだって、素材とかすごくもらえるらしいよ!」


「それっていつ?」


「確か来週の木曜日って聞いたけど……どうする? 挑戦する?」


アリスの問いに対するフロスの答えは試練の塔について聞いた時点で既に決まっていた。


「もっちろん! 新要素なんてやらない訳ないじゃん!」


「相当難易度高いらしいからレベリングはしとかないと大変なことになると思うよ?」


「ほんと!? それじゃさっさとレベリングレッツゴーだよ!」


「おっけーっ! 後アプデ情報はしっかり見ようね」


「はい、気をつけます!」


「よろしい! それじゃいこっか! 目指せレベル40!」


二人で目標を立てて森の中へと消えていった。

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