ケモナーのジョブシステム!

「ねえ、そういえばアプデ情報見た?」


「あ、まだ見てないかも。フロスは見た?」


「んー? 私も見てないよ」


3人+1匹で雑談しながら森の中を歩く。先程まで撃沈していたアリスは、バスクを出したら1発で調子を取り戻した。現金なものである。


「まだ見てないの? それじゃステータスしっかり確認した?」


「いや……下方修正のショックが大きすぎてまだ確認してないんだよね……」


フロスは入って早々通知を見てしまったのでその後はショックで一切ステータスは見ていないのだ。


「それじゃ見てみたら? アリスは見た?」


「ううん、私も見てないの。入ってすぐにあの状態のフロス見て……その後は私もショック受けちゃったから」


「ステータス」


フロス 

Lv.21HP 3950 MP 95

ジョブ 【マジシャン】

選択可能ジョブ【ファイター】【プリースト】【レンジャー】【ナイト】【アーチャー】【テイマー】

《STR》58【+10】

《LUK》26【+10】

《DEX》26

《VIT》69【+30 ・×1.5】

《AGI》51【+15】

《RES》26

《INT》103【+25】

装備品

頭部 【白狼の被り物】追加効果LUK+10

身体 【白狼の衣】追加効果VIT+30

メイン武器 【白狼の杖】追加効果INT+25

サブ武器 【白狼の脇差】追加効果ATK+10

足  【白狼の衣】

靴  【白狼の靴】追加効果AGl+15

補助品【きびだんご】


装備セット【フェンリルシリーズ】

氷魔法の威力大アップ(2.0倍)


スキル

【動物愛護】【白狼の絆】【召喚サモン

【蛇王の絆】【炎の心得I】【氷の心得I】

【スリープ】【鉄壁】【一心同体】【アンデットキラー】


称号【モフリスト】


SP0


「え? テイマーがある!? 見て二人とも! テイマーがあるよ!!」


「そう……! ジョブシステムがつい……って今なんて言った?」


「え? だからテイマーって……」


自慢げだったリーフの表情が驚愕の表情へと変わる。


「そんなの無いんだけど……アリスの方はあった?」


「私の方はないよ?」


「もしかして……」


一人だけ見慣れないジョブがある状況で、リーフは一つの結論を導き出す。


「フロス、テイマーの詳細見せてくれる?」


「ん? いいけど……」


フロスは早速メインジョブにしたテイマーをダブルタップして、詳細を表示する。


【テイマー】

解放条件 スキル【動物愛護】を所持。

ジョブ効果 テイムした魔物の基本ステータスが1.5倍になる。


「やっぱり……! 隠しジョブみたいなのがある! 条件付きの! ほら、これ見て!」


【アーチャー】

ジョブ効果 命中率3倍


「ね? 私のやつ取得条件なんてないんだよ。私のに表示されてるのみんな同じなの」


確かにそもそも取得条件なんていう項目自体が存在していなかった。


「んー……まあ一旦ジョブのことは置いといてスキル取り行っちゃおっか! もうすぐ着くよ!あ、見えて来た!」


リーフが指さした先には小さな祠があった。


「ほら、ここに入ってるよ!」


確かに中にはケモミミのようなものが入っている。


「これ取っていいの?」


そう聞いたはいいものの、リーフからの返事を得られる前に、祠へと手を伸ばすフロス。


「わっ!? なにこれ?」


祠の扉に触るとフロスの手が弾かれ、彼女の前にメッセージウィンドが開かれる。


『クエスト【頼み事】が発生しました。受注しますか?《YES》《NO》』


「あーそういう感じね? よし、クリアするぞーっ!」


フロスは勢いよくYESを押す。


「頑張ってね!」


リーフもそれを応援してくれていた。ただ一人、アリスだけは浮かない表情をしている。


「ねえフロス……本当に大丈夫?」


「ふっふっふ……安心して! 私にこなせないことなんて一つもないのよ!」


心配してくれたアリスに対して、自信たっぷりにフロスは返答する。


『一つ目の頼み事 ウルフを3匹討伐せよ』


「あ……」


しかし頼み事を見た瞬間、フロスは一瞬にして、思考の全てを放棄した。


「あれ? どうしたの? ……あぁ……」


アリスがフロスの画面を見て何かを察する。


「頼み事なんだったー? あー討伐系だったの? それならもうじき対象がスポーンするよ」


リーフがそう言った数秒後、3匹のウルフがその場にスポーンしてきた。


そしてそのままウルフ達がフロスに噛み付く。


「……っ! 残酷な……! 嫌だ……嫌だよっ! こんなにも愛おしいのに……なんで倒せなんていうの!?」


とてつもない頼み事をして来た祠にフロスは憤る。


「なんか言いなさいよ! この……っ!」


祠なので答えるわけもないのだが、リアルが見えていないフロスは祠に無視されたと感じ、魔法発動の体制を取る。


「ちょっと!? なにやってるの!? というかなに言ってるの!?」


「一旦落ち着いて!!」


そんなフロスを、二人で同時に抑える。


「離して! 私はあの祠を壊さないといけないの……! あの祠……私を無視した!」


「祠が喋るわけなくない!? 一旦落ち着け!」


アリスはフロスの顔を思いっきりビンタする。


「いった……! 何すんの!?」


「いいから落ち着け! あれ祠だよ? 喋るわけないじゃん!」


「ああ……うん、でも……」


「でもじゃない! やっぱフロスって馬鹿なの?」


小首を傾げながらアリスは真顔でそんなことを聞く。


「というか私たち止めてたけど……あれ壊れないんだよね」


リーフが少し気まずそうに言う。


「あれ壊せないの!?」


「残念ながら壊せないよ……ていうか大丈夫なの? さっきからずっと噛みつかれてるけど?」


只今フロスは足と手、それから首に噛みつかれながら二人と話している。


「うん、大丈夫だよ? ただのご褒美だもん」


「やっぱM……?」


「Mじゃない! ……はず」


最近の自分の行動を見返していると自分は潜在的にはMなのではないか?と疑って来ているフロスはMであることを完全には否定できなくなっていた。


「まあとりあえずさ……その子達は倒してあげた方がいいんじゃない?」


アリスがフロスに噛み付いている3匹のウルフを指差して言う。


「え……? なんで?」


「その子達はあんな祠のせいで生まれてこれからずっとフロスと敵対しないといけないんだよ? そんなの可哀想だよ……だから早めに楽にしてあげた方がいいと思う」


もっともらしいことを言うアリスにフロスは納得してしまう。


「ねぇ、何言ってるの?」


アリスの言っていることが全く理解できなかったリーフは小声でアリスに聞く。


「安心して、私も何言ってるか分からないから。とりあえずそれっぽいこと言っとけばなんとかなるのよ」


アリスのフロスに対する評価はもはやお馬鹿さんで固定のようだ。


「うぅ……うん! アリス、私決めたよ! ……っ! 【クリスタルランス!】」


覚悟を決めた表情で3匹のウルフ達に魔法を放つフロス。


「黄泉の道 皆辿り着くと 知りはすれ けふ我が日とは 思わざるなり とあるウルフの辞世の句だよ。どうか安らかに……」


いつぞやに妄想の中で作り出された辞世の句を散りゆくウルフ達のはなむけに詠み、冥福を祈る。


「ねぇアリス、あの子はプリーストの方が向いてると思うの」


「奇遇だね、私もそう思ってたところだよ。というかあの句……まだ死にたくないっていうのしか伝わってこないんだけど……」


「それは言っちゃいけないの」


そんなフロスの姿が二人には聖職者のように映っていたという。それと同時に辞世の句については触れないようにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る