ケモナーの月例大会!8

「ね、ねぇ……もういいかな?」


一人置いていかれたリーフは申し訳なさ気に二人に問いかける。


「あ、すみません! お待たせしました!」


待たせていることを思い出したフロスはリーフにもう大丈夫だと言う意を伝える。


「それじゃ始めよっか、ランカー対決……行ってみよう!」


リーフはそう宣言し、武器を取り出す。彼女の得物は弓だ。


「近距離で弓ですか……?」


「さあ? それは自分の目で……確かめてね! 【神速!】」


目の前にいたはずのリーフがものすごい速度で後退する。


「ほらこっち!」


「【召喚サモン】リル!」


フロス達もリルを召喚し二人でまたがってリーフを追う。


「え? ちょっ魔物!? それどうなってんの!?」


あまりにおかしな光景についついリーフが口を開く。


「話してる余裕あるんですか? リル行くよ! 【クリスタルショット!】」


余裕をかましてるリーフへ【クリスタルショット】を放つ。


「急に撃ってくるんだねー」


笑いながらそう言いつつ弓を前に構える。すると、リルが放った【クリスタルショット】は空中で止まった。


「さて……カウンター! お返しだよ!!」


そしてそのまま、リルが放ったはずの魔法がこちらに牙を剥いてきた。


「リル避けて!」


フロスの指示に、リルは大きく回避する。


「ふふ……びっくりしたでしょ?」


微笑みかけながらリーフはフロス達に言う。それにフロスは黙ったままコクコクと頷いた。


「ふふん……これはね? マグネっ……って危な! いつのまに!?」


自慢げに自分の武器を紹介しようとしたリーフに、アリスが襲いかかる。


「貴方達にはスポーツマンシップってのはないわけ!? 説明中は攻撃しないってお約束でしょう!?」


まさか説明中に攻撃されるとは思っていなかったリーフが軽く怒る。


「戦いにテンプレなんていらないんですよ! 【ダブルスラッシュ!】」


アリスの放った技を当然のように避ける。


「フロス! 今!」


避けた先にいたのはフロス。すでに攻撃準備にはいっていた。


「これならリーフさんのスキルがなんだろうと関係ありません!【アンクリスタル!】」


そして至近距離で魔法を放った。


「きゃぁっ!!」


避けきれずに、思わず悲鳴をあげるリーフ。


「まだまだ! 【召喚サモン】バスク!」


フロスは追い討ちする為に、バスクを呼び出す。


「よし! バスクトドメだ!」


フロスはそのままトドメを刺せと指示をする。その指示に、バスクはリーフに噛みつこうとする。


「……っ! 間に合った! 【神速!】」


クールタイムが終わった神速を再び使い後ろに回避する。


「もう許さないからね! 【プロテクト】」


そう宣言し、リーフは後ろの森に向かって弓を構える。


「【クリスタルランス!】」


もちろんこんなチャンスを逃す筈もなく、フロスはリーフに向かって即座に魔法を放った。


しかしフロスが放った魔法は、リーフの3メートル手前で掻き消える。


魔法が掻き消えたすぐ後、リーフがゆっくりとフロス達の方を向く。リーフの後ろには大量の木や葉が浮いていた。


「え? あのー……それはどうするんですか……?」


恐る恐るアリスが聞く。


「ん? 貴方達に撃つの!」


リーフはとても素敵な笑顔で応えた。


「それじゃー発射っ!!」


素敵な笑顔のまま、後ろにある大量のものを発射した。


「やっば……! ちょっと流石に避けきれないってこれは! フロス! なんか防げる魔法ない!?」


「いや流石にこの規模はきついつて……! 耐え切るしかないよ! ただ威力の軽減くらいは……! 【ファイアスラスト!】」


フロスが放った魔法はリーフが放った塊に軽く吸い込まれてしまった。


ぶつかる! そう思った瞬間、フロスとアリスの視界が何かに覆われる。


「……ねぇ、それやっぱりズルくない?」


3匹のモンスターによって大技を防がれたリーフがフロスに不満をもらす。


「【ヒール!】【ヒール!】【ヒール!】ポチしっかりして!」


ポチの残りHPが二桁になったことに気がついたフロスはリーフを無視し、ポチにヒールをかけ続ける。その間、リルとバスクはリーフを威嚇、牽制していた。


「無視?」


「ポチ、しっかりして!」


「ねぇ、無視?」


「ポチ……! 良かった!」


「もういいわよ……」


ポチの無事を喜び、一旦彼を指輪の中へ戻す。


「あの……? リーフさんどうされました?」


再びフロスがリーフに視線を戻すと、そこにはしゃがみ込み地面をいじっているリーフがいた。


「私なんてどーせ影が薄いよ……だから一人でプレイする羽目になってるんだもん……どーせ私なんて……」


どうやら無視されたことで相当落ち込んでいたようだ。悪気もなかった……そもそもリーフの声が聞こえてなかったフロスは頭にクエスチョンマークを浮かべる。


「フロスがリーフさんのこと無視するから……」


「え? リーフさん私に話しかけてたの!? 全く聞こえなかった……なんかごめんなさい」


「私はずっと一人でやることになるんだ……」


リーフは未だに落ち込み続けている。


「あの……もし良かったらなんですけど……この大会終わったら私たちと一緒にやりません?」


「え?」


リーフが顔を上げ、少しキラキラした目でフロスを見つめる。


「どうですか?」


「いいの……?」


「もちろんですよ! 一緒にやりましょう?」


「ほんとにほんと?約束してくれる?」


リーフの言葉に、フロスとアリスは大きく頷く。


「やった! ありがとうっ! どうせなら今から一緒に行動しようよっ!」


「え?いやあの……私たち一応リーフさんのこと倒しにきたんですよね?」


「え? だめなの……?」


フロスの少し否定的な言葉にリーフの目が潤む。


「いいですよっ! だから泣かないで下さい! 臨時同盟って事で一緒に行動しましょう! アリスもいい?」


「私は特に問題ないよ、フロスに任せる!」


「ほんとっ! ありがとうねっ!」


フロスは泣きそうなリーフに急いで肯定の意を示す。その言葉に、またもリーフは可愛らしくはしゃぎだした。


二人にゲーム仲間ができました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る