ケモナーの月例大会!7
「アリス、あの人?」
「うん、多分そうじゃないかな?」
フロスとアリスは、草原の中に立ちながら何かを見つめている人物を見つける。おそらくリーフであろう。
「どうする?」
こう言う場においてはアリスの方が適任だろう。そう考えて、フロスはアリスに判断を委ねることにした。
「うーん……この場合は奇襲でいいと思うよ? 私は近接主体だから……フロス、何か遠距離攻撃ある?」
「んー……私は基本魔法だから遠距離攻撃はある!」
「おっけー! それじゃ私が先に出てって気を引くから、どっかのタイミングで魔法撃ち込んでもらえる?」
「分かった! それじゃ作戦開……ん? ねえアリス、あの人……なんかこっち向かってきてない?」
二人で作戦会議をしていると、いつの間にやらリーフがゆっくりと二人に忍び寄っていた。
「そこの二人、出てきてもらえる?」
リーフから声がかけられる。
「ね、ねぇ……もしかしなくても私たちのこと……?」
フロスとアリスは目を合わせ、同時に後ろにいるであろうリーフを見る。
「そう、そこの二人」
目があった。
「「は、はい!」」
二人は思わず同時に返事をして立ち上がる。
「わざわざ隠れて……何の用? ……って聞くまでもないか。私を倒しに来たんでしょ? フロスちゃんにアリスちゃん?」
「なんで私たちの名前を……? それに位置まで……もしかして敵感知スキルみたいなのあるんですか? でもそれじゃ名前は……」
フロスが一人で考え込む。
「いやあの……マップだよ? 貴方達ランク入りしてるからマップに出てるの。ほら」
リーフはフロスとアリスにマップを見せてくる。そこには確かに二人の名前とリーフの名前が載っていた。
「あ、ほんとだ……ねぇアリス、私たちの作戦全部無駄だったって」
「皆まで言わないで……すでにメンタルやられてるの。うう……穴があったら入りたいよ……」
自分の立てた作戦が全て無意味だったことに気がついたアリスはひどく落ち込む。そこにフロスから明確に無駄だったと追い討ちがあったため、完全に意気消沈してしまった。
「あ、ごめん……」
「あの……大丈夫? なんかごめんね?」
アリスの落ち込みようは敵であるはずのリーフからも心配される始末だ。
「はい……大丈夫です……とりあえず一旦殺して貰ってもいいですか?」
アリスは未だに悲しそうな目をしながら、とんでもないお願いをリーフにする。
「え? ちょっと何言ってるのアリス!? リーフさん、一旦待って貰っていいですか?」
「え? ま、まあ待つくらいならいいけど……」
リーフに少しだけ待ってもらい、アリスの説得を試みるフロス。
「あ、アリス、落ち着いて? いつもの調子に戻って?」
フロスが少しどもりながら声をかけるもアリスの調子は治らない。「貴方には分からないでしょうね!?」などと壊れたロボットのようにリピートしている。
「うーん……こ、これならどう? ぎゅーっ!」
自分の胸部にアリスの顔を持ってきて、思いっきり抱きしめる。するとどうだろうか、なんとアリスのリピートが止まったのだ。
「良かった! アリスいつもの調子に戻った?」
フロスは安心してアリスを胸元から離す。しかし次に待っていたのは衝撃の一言だった。
「……固かった」
「か、かたっ……!?」
「でもありがとう! おかげで元気出たよ!」
「うっ……!」
アリスの言葉のナイフがフロスの心に突き刺さる。一体何に対して元気を出したのだろうか……
「いいよ……どうせ私は貧乳よ……」
アリスが調子を取り戻したはいいが、今度はしゃがみ込んだフロスが……なんて事もなく、ゆっくりと立ち上がった。
「はは……どうせ貧乳だよーだ」
死んだ目をしながらアリスを見つめているフロス。
「え? あ、いやその……多分装備つけてるからじゃないかな!?」
「私の装備コート……それにアリスのは鉄装備なのに柔らかかった……鉄装備で柔らかいのは普通にダメじゃない?」
「き、気にしないで! きっと大きくなるから……! ほら、個人差ってやつだよ!」
「ほんと? ほんとに大きくなる?」
フロスの目に少しだけ光が宿る。
「う、うん!大きくなるよ!」
「お母さんも小さいけど本当に大きくなる?」
「も、もちろん! 保証はできないけど」
アリスは小さな声で保険をかけつつ、フロスを元気付ける。
「え? 最後なんて?……まあいいや、もし大きくならなかったらアリスの引きちぎるけどそれでもいい?」
「も、勿論! ……ってちょっと待って!? 今なんか恐ろしい言葉聞こえたんだけど!? 引きちぎるのは無し!」
とりあえず全肯定の形をとっていたアリスはとんでもない言葉を流してしまい、急ぎ訂正する。
「あはは、冗談だよ?」
「目がガチなんだもん……冗談に見えなかったよ」
「大丈夫、だって私のはちゃんと大きくなるんでしょ? どんな約束しても問題ないよね?」
おそらく本気であろうフロスに、アリスは心から震え上がりリーフを盾にフロスから距離を取った。
「ねえ……これどういう状況?」
ただ一人、そこに置いて行かれたリーフはただただ困惑していたらしい。
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