ケモナーの月例大会!6

「フロスーっ! 大丈夫?」


アリスはマップをみてフロスのいるところへと向かう。


「あーアリスー……無事だったんだね、良かったよ」


リルの背中の上で大の字に寝ているフロスは首だけをアリスに向ける。


「な、なんかすごい疲れてるね……」


「そりゃ疲れるって……なんでこっちにあんな沢山寄ってくるの!? 普通半々に別れるところじゃない? それに大技も避けられるし踏んだり蹴ったりだよ……」


おそらく蛇よりは狼の方が弱く見えたのだろう。追ってきていたプレイヤーの75%はフロスを追ってきていたのだ。


「あはは……まあお疲れっ! この後どうする?」


「んー……後どのくらいある?」


気怠げにアリスに顔だけを向けて残り時間を聞く。


「えっとねー……後一時間二十分だって」


「まだそんなにあるの? とりあえず大人数とは戦いたくないな……大人数と戦わずにポイント稼げる方法……そうだ、ランカーを狩ろう!」


閃いた! とでも言うように声のトーンを上げる。


「随分と簡単にいってくれるね!? 何ピクニック行く気分でトッププレイヤー狩りに行こうとしてるの!?」


「この大会だと一応私たちもその部類だよ? うん、つまりいける!」


「何その謎理論……」


「トッププレイヤー=強い、トッププレイヤー=私たち。つまり私たちは強いの! 行けるよっ! 細かく稼ぐのなんかやめようよ、大博打だ!」


リルから降りて、アリスの肩を掴み熱く語る。


「分かった! 分かったから離そ? それにランカーを倒しに行くとしたら作戦は必要だと思うよ?」


「作戦? そんなの……私がやって、アリスがやる!」


特に何も思い浮かばなかったフロスは適当なことを口に出した。もちろん言っていることはメチャクチャである。


「ねぇ、フロスって実は馬鹿なの? 勉強はできても馬鹿なの?」


「うん……ん? 私なんで急に罵倒されてるの?」


「え? 馬鹿だから」


シンプルに罵ってくるアリスにフロスは驚きのあまり目を見開く。


「もしかして……眠い?」


アリスは眠くなると何故か罵ってくるようになるのだ。ちょうど少し前にも勉強出来なさそうな顔してると罵られたばかりだったフロスは、すぐにその結論へとたどり着いた。


「んー? 別に眠くないよ?」


「それなら……もしかして人格入れ替わっちゃった!?」


「何言ってるの? 変なこと言ってないで、どうするか決めよ?」


「良かった……いつものアリスだ……! おかえりっ!」


いつもの優しいアリスに戻ったことでフロスは心底安心する。


「うーん……どうせ狙うなら1位が良いんだろうけど……ねぇフロス、この人はどう? 2位のリーフさんって人。一番近いし一人だし……狙うならここだと思うんだけど?」


「アリスに任せるよそれは、私は大人数と戦わなければそれで良いの……」


襲われた時のことを思い出して震えるフロス。


「よしよし、怖かったね? 私がいるからもう大丈夫だよ?」


「うん……怖かった……少しだけこうしてて良い?」


母性全開のアリスにフロスはついつい甘えて、抱きつく。


「見つけたぞ! 暫定ランク4位だ!!」


そんな中、一つのチームが二人を見つけ襲いかかってくる。


「リル、バスク、ポチ、お願い」


その声を合図に、モンスター達がプレイヤーに襲いかかる。


「このモンスターなんだよっ! クソが!」


大量のプレイヤーを殲滅することができるモンスターに3人で叶うわけもなく、襲ってきた3人もそのまま光の粒子となり、リスポーン地点へと送られた。


「ふふふ……この子達も倒せないのに私に挑むなど100年早いのよ……」


3人のプレイヤーが倒されたことを確認して、アリスの胸の中でボソッと呟く。


「あ、それまだやってたの? 後そろそろ離れてもらえないかな? ぐりぐりされるとちょっとくすぐったいの……」


軽く顔を赤くしながらフロスに離してもらうようにお願いする。


「あ……ごめんね? つい気持ち良くって……」


名残惜しそうな表情でアリスを見つめるフロス。


「そんな目で見つめないでもらえない!? なんか私が悪いみたいになってる気がするんだけど……?」


フロスの悲しそうな目に少し……いや、かなりの罪悪感を持ってしまったアリスは咄嗟にツッコミ気を紛らわせる。


「あ、ごめん……とりあえずリーフさんって人がいるところ行こ?」


二人は手を取り合い、周りに三匹の魔物を侍らせながら歩き出した。目指すは暫定ランク2位のリーフがいると示された草原だ。


「あ、そうだ、その……たまにでいいからさ……胸触ってもいい? 思ったより気持ち良くて……」


少し言いづらそうに、フロスは小さな声で言う。


「自分の触れば!?」


フロスの爆弾発言に、反射的に自分の胸を両腕で守りながらツッコんだ。


「そこをなんとか……!」


「ええ……急にそんなこと言われても……はぁ……たまにね? もしフロスが男だったらとんでもない発言だよ……」


「やった!」


フロスの純粋で犬のような目に、悩みながらも、アリスはついついOKを出してしまった。

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