ケモナーの月例大会!5

「おい、いたぞ! あそこだ!!」


先程の運営のコールから、1〜5位のプレイヤーは常に位置情報を公開されるようになっていた。


「アリス! 一旦別れよう!」


「おっけ! 後で集合ね! やられないでよ!」


「そっちこそ!」


二人は一旦別れることにした。


「あの蛇の方を追うぞ!」


「あの狼の方が弱そうだよ! 行こう!」


二人を追いかけていた集団から次々と声が聞こえる。皆それぞれの裁量で追う方を決めていた。


この大会では同じチームにいる全てのプレイヤーが均等にポイントを持っている。例えばアリスとフロスの場合、総合ポイント5608、つまりそれぞれが持っているポイントは2804である。片方だけでも倒せば704ポイント、狙わない手は無かった。


「リル、ストップ!」


しばらく進んだところでフロスはリルにストップをかける。


するとリルはすぐに止まり、ついでにプレイヤー達の方を向く。


急に逃げることをやめたフロスに追っていた者は皆一様に困惑する。


「よし……! クールタイム終わり! 行くよ、リル!」


再びリルを中心に地が凍る。


「全員飛べ!!」


一度見た攻撃は2度受けまい、と先程フロス達を襲った集団にいた一人が全力で声を張り上げる。


その声によって、実に半数のプレイヤーが凍結による固定を回避した。


「同じ攻撃は効かねぇよ!」


先程声を張り上げた人物が見たか!と言わんばかりに叫ぶ。


「【融合】ポチ!」


一旦ポチと融合し、ステータスの底上げを図る。狙いは主にAGIだ。


「【アンファイア!】【ファイアスラスト!】【ファイアボール!】」


炎魔法を連続で放つ。しかし倒すまでには至らなかった。


「おっかしいなあ……融合してるはずなのになんで……あっ! ポチってINT 0だ!」


一人で疑問を作り出し一人で解決するフロス。その姿にプレイヤー達は一瞬呆気に取られていた。


「って何ぼーっとしてんだ! 覚悟しろ!!」


かかってくる男を持ち前の運動神経と高いAGIによって見切る。


「甘いですよ!」


そして短刀を出し、男を数回切りつける。もともと炎魔法でかなりHPが減っていたようですぐにリスポーン地点へと返された。


「さあ……次は誰がきます?」


杖を後ろにしまい短刀を構えて、周りにいる人たちを睨みつけながら一言放った。



「バスクちゃん! そろそろ戦おっか! 止まって!」


深い森に入り込み、ここならばある程度戦えるだろうと判断したアリスがそう指示すると、バスクは大人しく止まる。どうやら主人のチームメイトからの命令も聞くようだ。


「バスクちゃん、最初は私がやりたいから手を出さないでね? 今回ほぼ何もしてないし……」


少し落ち込んだ声でいうアリスにバスクは大人しく尻尾を地面に打ちつけた同意した


「お嬢ちゃん、こっちは50人以上だよ? 一人でどうするつもりだい?」


小太りの男が、剣を構えたアリスに言う。


「50人くらいにはビビりませんよ……私、ゲームは得意なんです! 【ウィンド・オブ・スラッシュ!】」


挨拶代わりに風の斬撃を飛ばす。


「こんなもの!」


しかし風の斬撃は簡単に防がれてしまった。


「はぁっ!!」


防いだ一瞬の隙を突き、敵の懐に入り込み剣を振るう。


「っ! はっや……!」


アリス自体、AGIはそこまで高くない。むしろフルプレートのせいで落ちている。故に彼女が疾いわけではなく、疾く見せているにすぎないのだ。


「【スラッシュ!】からの【ダブルスラッシュ!】」


そのまま倒れ込んだプレイヤーに連続で技をお見舞いする。2回の技でプレイヤーはリスポーン地点へと戻された。


「後49人……きっついな……!」


「たしかに上手いっぽいね……でもこの人数にどこまで立ち回れるかな?」


プレイヤー達はアリスの周りを囲み逃げ道をなくした。集まっているプレイヤーは近接武器から遠距離武器まで揃っている。このまま戦うとアリスは圧倒的に不利だろう。


「かかってこい……!」


アリスは戦うことを選択した。


瞬間、アリスに魔法が飛んでくる。それも複数同時に。


「きっつ……! 一人相手にやること……!?」


文句を言いながらも全て避け、近くにいた者を攻撃しに行く。しかし攻撃している間はやはり無防備になってしまい、魔法攻撃をその身に受けてしまった。


「った……やっぱり無理かー……誰よ、攻撃は最大の防御とかいった人! 思いっきり攻撃くらってますけど!? このままじゃやっぱりキツそうかなー……」


「もう諦めたらどうだ?」


プレイヤーの一人から声がかけられる。


「まだまだ!」


次は地形を利用し、三次元的動きをする。


「ここっ! 【フレイム・オブ・スラッシュ!】」


そのまま、遠距離攻撃主体のプレイヤーを攻撃しに行く。


「やっぱり1発じゃきついよね……喰らえ!!」


そのまま連続で攻撃をお見舞いした。


「はぁ……はぁ……後48人……!」


ゲームとはいえ、ある程度動けば疲れは溜まる。まだ始めたばかりのアリスはレベリングをしまくったとしてもやはり時間には勝てない。おそらくこの中の半数はステータス的に、アリスより上だろう。


「確かに勝ち目は無いかもしれない……でもね、負けるわけにはいかないの……! フロスと約束したから! だから……貴方達が勝つなんてことは絶対にないのよ!」


そう宣言し、バスクの元へと戻っていく。


「バスクちゃん! やっぱり一人はきつかったや、次は二人でいくよ!」


バスクの上に乗り、攻撃指示をする。するとあたり一体が毒で満ちた。エリアから逃げようとする者はバスクの牙の餌食となる。


アリスとバスクは追って来た者達を全て殲滅することに成功した。


「早くフロスのところ行かなきゃ!」


殲滅し終わったアリスは今戦っているはずの相棒の元へと足を進めていった。

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