とあるヘビ好きの大誤算!

「【スラッシュ!】からの【ダブルスラッシュ!】っし! 13体目!」


フィールドへ出ているアリスはまるで鬼神の如く弱い魔物を狩り続けていた。あくまでも狩り続けていたのは弱い魔物である。故に大したレベルアップはない。


『レベルが10になりました』


「えーっ? まだ10レベー? 効率悪いなー……もっとこう、一発どでかいの倒したほうがいいのかな?っと【ダブルスラッシュ!】」


かかってきた二匹を【ダブルスラッシュ】で同時に葬る。


『スキル【アニマルキラー】を取得しました』


「お、新しいスキルだ。どれどれー?」


【アニマルキラー】

動物系モンスターへ与えるダメージが1.3倍になる。

取得条件

一定時間内に動物系モンスターを15体以上狩る。


「ウルフばっかり狩りまくってたからかな? ……はっ! こんなスキル持ってるのバレたらフロスに嫌われちゃう! 隠し通さなきゃ……!」


アリスはどうにかして隠蔽する方法を探すためにヘルプを見る。


「スキル合成……これだ!」


【スキル合成】

特定のスキル同士を合成することで新たなスキルへと進化させる。


「レシピは……ない! なんで無いの!? 今あるスキルで合成は……出来るわけないよねー。同じ系統のスキル探すしかないかなー……うん! ランバーさんかミーナさんに聞きに行こ!」


そう考えて交換した二人の情報を見る。ランバーさんはインしておらずミーナさんも既にログアウトしたようだ。


「二人ともいないし! そういえばフロスがバスクちゃんを見つけたところはアンデットばっかだったって言ってたような……だめ! バスクちゃんしか頭に出て来ない! とりあえず動物系以外で探すしかないかなー……奥の方行こ。というかなんで私が気を使わなきゃいけないの!? フロスだってこんなのでいちいち怒ったりしないわ!」


「私がどうかしたの?」


アリスは一つ重大なミスを犯した。それは大声でフロスの名前を叫んでしまったことだ。森の深い方にいるアンデットを主に狩っていたフロスにその声が届いてしまった。その結果……最悪のタイミングでエンカウントするという最悪の結果を引き起こしてしまったのだ。


「フ、フロス? なんでこんなところに……?」


フロスの声を聞いたアリスは一瞬硬直し、錆びついたロボットの如くゆっくりと首だけを動かしてフロスの方向を向く。


「ん? なんか奥でレベリングしてたらアリスの大きい声が聞こえてさ。ちょっとこっちまで来ちゃった!」


「へ、へー……そうなんだ……」


「どしたの? なんか顔色悪いよ?」


フロスは下を向くアリスの顔を覗き込む。


「い、いや! なんでもないよ! なんでも……」


「そお? ならいいけど、ところでなんか新しいスキルゲットした?」


「い、いや、まだゲットしてないよ……」


嘘がバレないよう、絶対に顔は見んとするアリス。


「そっか! それならおすすめのスキルあるから一緒に行こ!」


そんなアリスを気にすることなく、返事も待たずにフロスはアリスの手を取り森の奥へと足を進めていった。


「ほらここ! アンデッドが結構いるでしょ? なんか15体以上倒すとアンデッドへのダメージ上がるんだって!」


アリスはここで気がついた。これは私が探し求めていたスキルであると。


「ほんと!? フロスありがとね! ありがとね!!」


そして彼女は盛大に歓喜した。スキル合成さえしてしまえばもうバレないと。びくびく怯える必要はないと、そう確信した。


「そんなに喜ぶ!? まあ喜んでくれてよかったよ!」


アリスの異常な喜びように、フロスは少しだけ疑問を覚えるも笑顔で流した。


「よっし! 狩りまくるぞー!」


アンデット狩りをしているアリスは鬼気迫る表情で、フロスは声をかけようにもかけられなかった。40、いや、50は狩っているであろう彼女にはすでにスキルの通知が届いているはずだ。それにも関わらず辞めようとしないアリス。気がつくとアリスはすでにフロスのレベルを上回っていた。


「ちょ、アリス! もう3桁は狩ってるんだけど!」


フロスの声にアリスは目を覚ます。


『レベルが18になりました』


「あ、レベル18……ねえ、今フロスのレベル何?」

「え? 14だけど」

「やったーっ! フロスのレベル超えた!!」


フロスのレベルを聞き、アリスは歓喜する。


「そりゃあんだけ狩り続けてれば超すでしょうに」


それに対しフロスは苦笑いしながら答える。


「スキルポイント振らないと!ステータス!」


アリス    

Lv.18HP700 MP 120


《STR》69【+9】

《LUK》4

《DEX》16

《VIT》83【+23】

《AGI》76【−8】

《RES》38

《INT》26


装備品

頭部 【メタルヘルム】

身体 【メタルプレート】追加効果VIT+8

メイン武器 【メタルブレード】追加効果STR+9

サブ武器 【なし】

足  【メタルパンツ】

靴  【メタルシューズ】追加効果AGI−8

補助品【ルパートの涙】


装備セット【フルメタル】

VIT+15


スキル

【スラッシュ】【ダブルスラッシュ】【ヒール】【片手剣の心得I】【アニマルキラー】【死霊の天敵】


SP30


「あれ、新しいスキルあるじゃん。なんだろ?」


【死霊の天敵】

死霊系のモンスターに与えるダメージが1.8倍になる。

取得条件

スキル【アンデッドキラー】を持った状態で、一定時間以内に死霊系モンスターを30体以上倒す。尚、このスキルを手に入れた場合、スキル【アンデッドキラー】は消滅する。


「合成……出来ないじゃない……」

「アリス、スキルゲットできた? って結構持ってんだねー。スラッシュにダブルスラッシュにヒールに片手剣の心得にアニマルキラー……? ねえ、このスキルどうやってゲットするの?」


ショックで彼女は気がつかなかった。後ろからフロスが覗き込んでいることを。


「このスキル死霊系の動物版? って事でいいんだよね? アリスがいたのはあの森ってことは……もふもふたちを狩りまくったってこと……?」


その言葉と共に、フロスの手がゆっくりと挙げられ……


「ま、待って……話せば分かる……!」


そして……


「ばかあああああああ!!!」


フロスの大声と共に振り下ろされる。

 アリスの隠蔽工作は失敗に終わったのだ。ちなみにフロスのビンタはアリスにほとんどダメージを与えられなかったという。彼女は後にこう語った。


「フルメタル強」

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