ケモナーの新装備(?)
「おう、フロスじゃねぇか。んで隣は……」
「あ、友達のアリスです」
「そっか、よろしくなアリスちゃん!」
「それで、わざわざお友達を紹介しにきた訳じゃないだろ?」
「えっとですね、そういう装備を手に入れるにはどうしたらいいんですか?」
ランバーから話を振られたことで雑談は終わりにして本題に入る。
「ん? そんなのフロスも持ってるじゃないか」
「私のはボスドロップなので……倒し方もかなり特殊でしたし、ボスドロップ以外で何かないですか?」
フロスはきびだんごを使い手懐けた結果装備がドロップしたのだ。本来ならば初心者がすぐに手に入れられる代物ではないだろう。
「それならプレイヤーメイドでいいんじゃないか? 生産職の奴が素材の持ち込みでやってくれる筈だぜ。なんならミーナも生産職だし適当に素材集めてから頼んでみたらどうだ?」
「え、ミーナさんって装備作れるんですか!?」
フロスは実に耳寄りな情報を入手した、と歓喜する。フレンドに生産職の人がいるのなら頼みやすいしとてもありがたい。
「ねえ、ミーナさんって誰?」
ミーナのことを知るはずもないアリスがランバーに聞こえぬよう、フロスにミーナについて聞く。
「ああ、そういえばアリスは知らないもんね、ランバーさんとミーナさんは私のケモナー仲間だよ」
「おい、勝手にケモナーにするなよ。オレはケモナーにはならんからな! 獣も狩り続けるつもりだし!」
フロスは小声で言ったつもりだったがランバーに聞こえていたようだ。そしてケモナー仲間という部分を全力で否定された。
「ランバーさん……そんなに否定しなくてもいいじゃないですか!?」
「……正直いうと俺な、最初お前みた時さ、すごく引いたんだ」
「いきなり悪口ですか!? 何なんですか!?」
唐突に自分の悪口を言われて困惑するフロス。そんなフロスを横目にランバーは話を続ける。
「いや、お前の行動は引かれてもしょうがない。何故か無抵抗で殺され続けてるのをみて引かない奴はいないと思うぞ? まあなんだ、その後にお前、どうやってかは知らんけど、ウルフを手懐けてたろ? そん時のお前の笑顔見てたら……引いてたはずがすげえ惹かれたんだよ」
「……なんですか? 告白ですか? ごめんなさい。まだ良くは知らないので付き合うのは無理です」
「告白じゃねぇ! そして勝手に振られたんだけど!? ゴホンっ! まあいい、何が言いたいかというとな、怖いんだよ。お前の誘いに乗ると俺が俺じゃなくなるような……まあどの道俺はこれからも獣を狩るからケモナーにはなれないよ」
ランバーが一通り語り終える。フロスはそれを聞いてただただ黙っていた。
「……ランバーさん、獣を狩り続けるからなんですか? 愛の形は人それぞれ、別に殺すからケモナーになれないとかはないですよ。それに……自分が怖いってなんですか? それはもう一人のランバーさんなんですよ? 世界中の誰が嫌っても、怖がっても、せめて自分自身は自分を認めましょうよ、好きになりましょうよ。貴方にはケモナーの資質が十分にある。さあ、共に進もうじゃないですか……ケモナーへのみーーって痛い! ちょっとアリス何すんの!?」
ランバーの語りを聞いても尚ケモナーへの勧誘をやめないフロスをアリスが叩く。
「ほら、馬鹿なこと言ってないでさっさと行くよ! ランバーさん、この子の言うことは気にしないでください。相手の全てを肯定するっていうのはこの子の常套手段なので、それじゃありがとうございました!」
「ちょっ! 離して!! 私は教えを説くのよ!」
「あんたはカルト宗教の教祖か!? ほら、それよりもう夜遅いから今日は落ちるよ!」
押さえつけてくるアリスをフロスは全力で引き剥がそうとする。さながら飼い犬を躾ける飼い主かのようだ。
「なんで離れないの!? 私の方がレベル上なはずなのに……さてはアリス! もう私よりレベルが高いのね!? 裏切り者! 一日で追い越しやがって!」
なかなか引き剥がせないことでフロスは取り乱し、水あげされた魚の如く暴れ出した。
「情緒不安定か! それに私はまだレベル8よ、狩りまくってたからね」
「嘘だ! それじゃなんで私引き剥がせないのよ!」
「いや……フロスのステータス覗き見しちゃったけどHPに振りすぎだからでしょ……フロスのHP私の5倍以上あるよ?」
「……よし、落ちよう。こんな時間だし私たち学生はもう寝る時間! ランバーさん! 色々とありがとうございました! また適当に素材集めることにします!」
「ちょっと待ってまだ19:00だよ!? 赤ちゃん? 赤ちゃんなの!?」
「それじゃまた明日!」
少し気まずくなったフロスは適当な理由をつけて、さっさとログアウトすることにした。
「……夕飯食べてアニメみて寝よ」
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