ケモナーの受難!

「さて、そろそろ頃合いかの。お、お主……何故ピンピンしておるのじゃ!?」


およそ一時間が経過した頃、檻の中の獣たちと戯れている襲われているフロスの前に老人が姿を現す。


「あ、おじいさん! 私、獣にはダメージ与えられない代わりに獣からのダメージが一切なくなるんでここだとHP減らないんですよ、それよりも……こんな天国をありがとうございます……!」


「ふむ、そうか。お主には不屈の防御力VITがあるんじゃな。もしやあのスキルを覚えられるやも知れぬ」


「あのー? VIT高くないですよー?」


謎の解釈をするお爺さんにフロスは思わず突っ込む。


「スキルの名は【不屈の心】どうじゃ?お主にぴったりじゃろ」


「だめだ、この人話通じないタイプだ。いや……通じるわけないのか。それじゃお願いします」


フロスはおじいさんの説得は諦めスキルをもらう方向にシフトした。


「その心意気やよし! それじゃそこに正座しとくれ、もしお主に素質があるのなら10分くらいで終わるはずじゃ」


そういうと、フロスを座らせたおじいさんは独特なダンスを始め、フロスの周りを回り続ける。


「あのー……? 何をしていらっしゃるのですか……?」


おじいさんが踊り始めておよそ5分。すでにフロスは限界だった。しかし無理もないだろう。すでに3分以上おじいさんのポールダンスを見せられているのだから。


最初の2分はおじいさんがフロスの周りを変な動きをしながら回るだけだった。しかし2分がすぎた頃、突然フロスの前にポールが現れたのだ。彼女がびっくりしているとおじいさんはそのポールを掴み、今度はフロスの前で回ることになった。まともな神経をしていればおそらく耐えきれないであろう老兵のポールダンス。彼女も例外ではなくすでに限界だった。


「おじいさーん……? 聞いてますー?」


おじいさんからの返事はない。あくまでもポールダンスを続けるつもりのようだ。いくら語りかけても効果がないと悟ったフロスは……考えることをやめた。


「これ! 目を瞑らんとしっかり見なさい!」


目を瞑り何も視界に入れまいとするとおじいさんから怒号が聞こえてきた。おそらく目を瞑っているとスキルを取得できないのだろう。とりあえずスキルが欲しかったフロスは我慢しておじいさんのポールダンスを見ることにした。


後この地獄が5分続く……



『クエスト、【じじいからの頼み事】を達成しました』


『スキル【不屈の心】を取得しました』


フロスの頭にスキル取得の通知が流れる。


【不屈の心】

VITが1.5倍になる。

取得条件

クエスト【じじいからの頼み事】の隠しエンディングを見る。


「アリス……私やったよ……地獄のクエストをクリアしたよ……!」


スキル通知が流れてフロスはこの地獄が終わったことを認識する。


「ほっほっほ……儀式、ご苦労じゃったの。これで終わりじゃ。もう何もないぞい。さあ、帰るのならそこの扉から出ていくといい」


先程地獄を見せた張本人、この小屋の主人が扉を指差し帰るよう促す。


「あ、ありがとうございました」

「うむ、達者でな。そのスキルはきっとお主の力になってくれよう」


フロスはおじいさんに礼を言い、再び草原を駆け出した。


「モンスターみっけ! 【アンファイア】」


炎魔法を唱え、目の前に出てきた虫を倒す。


『レベルが14に上がりました』


「あれ? もう上がったの? もしかして……この子達経験値多い?」


さっき倒したモンスターはおそらくラッキーモンスターだ、そう考えて同じモンスターを探すことにした。


「みーっけ! 【アンファイア】」


早速一匹みつけ即座に炎魔法を放つ。


「お! ここにも!」


すぐそばにもう一匹。レアモンだと思っていたモンスターが何匹も見つかることに、最初は彼女も疑問を持たなかった。疑問を持つようになったのはおよそ10体狩ったときだ。


「あれ? レベル上がんないなー」


ここでようやく気がつく。あのモンスターはレアモノでもなんでもないと。


「うーん……もういいや、戻ろっと」


レアモノではなかったことに少しがっかりはしたが、すぐに切り替えもうすぐ約束の時間だと言うことを思い出し、最初にアリスと話していたところに戻ることにした。

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