ケモナーのスキル旅
「スキルって言ってもなー……何すればいいんだろ。お店で買うにしても今はお金ないしなー」
いつも行っていた狩場とは反対方向に向かい、広い草原に出た。そこでフロスは何から始めていいのか分からなくなり困惑する。しかしその困惑した状況下でもモフりを止めることはなかった。
『スキル【一心同体】を取得しました』
そのモフモフへの執念が功を奏したのか、新たなスキルの取得を知らせるメッセージがフロスの元へ届く。
「おお、新しいスキル! どれどれー?」
【一心同体】
このスキルの保有者はテイムした魔物と【融合】することができる。
取得条件一定時間以上テイムした魔物と触れ合い続ける。
「んー……融合って何!? ついに私がケモナーの宿願を……!?」
次に融合の欄を押して効果を確認する。
【融合】
一時的に魔物を体に取り込みステータスを上昇させる。尚、身体的特徴は出ない。
「身体的特徴はでない……それじゃただのステータスアップじゃない……私の耳は!? 尻尾は!? ……あ、耳はあった」
一人で何か騒いでいるフロスは不意に空を見る。
「あ、鳥だ。捕まえられたら色々と楽になりそうだなー……ま、降りてこないと無理だよね。また今度にしよ。スキルさーん! 出てきてー!」
こんなことを叫ぶ推定IQ3の彼女を遠くから眺める一つの影があった。
「あの耳……いいなー……」
少し羨ましそうな眼差しをフロスに向け、その人物は静かにフロスのことを見ていたのだった。
「それじゃポチ、リル、バスク、行こっか!」
バスクとは先日捕まえた蛇の名前である。バスクの種族名はバジリスク。名前はそこからとったようだ。
◆
「あ! なんか見えてきたよ!」
フロス一行(一人と三匹)はしばらく草原を歩いていると、少し遠くにある小さな小屋を目に映す。何かあるかもしれない!そう考えて彼女たちは先に見える小屋まで駆け出した。
「たのもー!」
そして元気よく入り口から小屋の中へと入っていく。
「ん? これはこれは……客なんて久しぶりじゃのう。ほれ、茶でも飲みなさい」
おそらく小屋の主人であろうご老人は失礼な入り方をしてきたフロスを追い出すこともなく、嫌がることもせずに招き入れて茶を出した。
「さて、久々のお客さんにいきなりこんなことを言うのも少し気が進まんのじゃが……わしの手伝いをしては貰えないかの?」
フロスたちが出されたお茶を飲んでいるとおもむろに老人が喋りだす。
「何ですか? 私にできることなら何でもしますよ!」
「ん? 今何でもするって……ゴホンッ! すまない、取り乱した……わしが頼みたいことというのはな、猛獣の世話なんじゃよ……実は裏で猛獣を飼っておるんだが最近はわしも歳をとった故、なかなかあの子らに構ってやれんのじゃよ」
「猛獣の世話……ですか? どうすれば?」
「うむ、武器だけはしまって猛獣たちがいる檻へと入ってもらえるか? その先はあの子らを傷つけることさえしなければ何をしても構わん。どうじゃ? やってもらえるかの? もちろんただでとは言うまい、それ相応の礼はさせていただくと約束しようぞ」
おじいさんが一通り喋り終わると、フロスの前に半透明の板が現れる。
『クエスト【ジジイからの頼み事】が発生しました。受注しますか?《YES》《NO》』
フロスは迷わずにYESのボタンを押す。
「そうか! 受けてくれるか! それじゃその持っている杖だけここでしまっていってもらえるかの?」
クエストを受けたフロスは言われた通りにインベントリに白狼の杖をしまう。
「それじゃわしに着いてきとくれ」
おじいさんに従いゆっくりと歩くフロス。建物の裏口から出て庭に入ったフロスの目の前には三匹のウルフがいた。
「ほれ、この子達じゃよ。可愛いじゃろ?」
おじいさんの言葉にフロスは無言で頷く。すでに彼女の視線は狼たちに固定されており、その思考はどうモフろうかという事で埋めつくされていた。
「それじゃこの中に入っとくれ。頃合いになったら迎えに来よう」
おじいさんはそう呟くと
「おじいさん……ありがとうございます!!」
フロスはおじいさんに全力で頭を下げてすぐにウルフたちのところへと向かった。
「よーし!たくさんモフるぞ!!」
この言葉に、ウルフたちは一瞬恐怖を感じたと言う。
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