最終章 真相
1
踏み台の調査をお願いしてから1時間。
私は、待っている間もっと証拠を掴むために部屋をもう一度探した。
「踏み台の調査終わりました。」
警察が連れてきた、新米鑑識官が入ってきた。
「調査ありがとうございます。」
「調査してみたところ、四条さんの足紋とは一致しませんでした。」
「えっ」
私は何も言えなかった。
だって、そんなはずはない。
「本当に一致しなかったんですか?なにかの間違いの可能性は?」
「間違いはないと思いますが。」
私はわからなかった。
でも、時が経つとともに私の頭の中には新たな推理が出てきた。
それを確かめるためにも、三井さんの足紋も調査してもらった。
それから私は、もう一度頭の中を整理した。
何度も何度も自分に大丈夫だと言い聞かせた。
そして、しばらくしてからもう一度証拠を探し始めた。
「再調査の結果でました。」
やっと結果が来た。
「調査をした結果、やはり四条さんのとは一致しませんでしたが、三井さんのとは一致しました。」
私はその答えに信じられなかった。
三井さんが犯人だなんて信じられない。
「もう一度調査お願いします。」
新米鑑識官は呆れた顔をした。
それでも私は諦めず何度もお願いした。
これが最後だと言われてしまった。
どうしてだろうか。
いつも予想外のことが起きる。
それでも私はどうしても、三井さんが犯人だなんて信じられないし、信じたくもない。
もちろん探偵として、その考えはよくないと思うが、いざこうなってみるとやはり信じたくない気持ちでいっぱいになる。
「再々調査終わりました。」
来た。
「調査した結果やはり三井さんのものと一致しました。」
私は、今度こそこれが真相なのだろうと思い諦めた。
「調査ありがとうございました。」
私はこのことを菜穂子さんに伝えるため彼女がいる部屋へと戻った。
2
私は、やはり信じられない。
走りながらもそんなことを考えていた。
私は、ドアの前に着き一度深呼吸をした。
ドアを開くと真剣な顔で証拠を探している菜穂子さんの姿が見えた。
「あら、唯さん。どうかされましたか?」
「少しお話したいことがあるので外に来ていただいてもいいでしょうか?」
私は菜穂子さんを部屋の外へと連れ出し、溢れてきそうなものを必死に抑えながら、話した。
「実は、ずっと気になっていた踏み台を鑑識に回してみたんです。」
「ええ。それは聞いたわ。」
「それでさっきその調査結果を聞いたら四条さんのとは一致せず、三井さんのものと一致したみたいです。」
しばらくの間、静寂の時間が流れた。
最初に喋り出したのは菜穂子さんだった。
「アリバイや四条さんの部屋の置物は?」
「おそらく、彼女は現場にはいなかったのでしょう。置物は中井さんを殺したとき盗んで隙をみて四条さんの部屋に入れたんでしょう。」
「なるほど。ならば一応、三井さんの部屋に行ってみましょうか?」
「そうですね。」
3
「あれ?唯さん?菜穂子さん?どうかされましたか?」
「少し部屋を拝見してもよろしいですか?」
「ええ。」
私は、必死に証拠を探した。
そんな時、私の頭の中で一つの考えが浮かんだ。
私は慌てて、中井さんの部屋の睡眠薬を確認した。
「一つなくなってる。」
私は、三井さんの部屋に戻り、菜穂子さんを呼んだ。
「もう証拠を探さなくても大丈夫です。」
「えっ?」
「みなさんを大広間に集めてください。私、井上唯の推理ショーの始まりです。」
4
大広間に警察関係者、四条さん、三井さん、そして菜穂子さんが集まった。
「みなさん。お集まりくださってありがとうございます。」
私は、緊張して今にでも逝ってしまいそうである。
「みなさんにお集まりいただいたのは今までに起きた、第一の事件と第二の事件の犯人がわかったからです。」
ざわついた。
「まずは、第一の事件です。」
「第一の事件のトリックはこうです。」
「まず犯人は崖の向こう側の丘に行き、時間になるとナイフが飛び出す仕掛けを日用品の中で作り、その装置に発射される前にライトがつく仕掛けもつけた。そうすることによって被害者の男性の部屋にライトが差し込み、それを確認するために被害者が窓を開けた時に刺さってしまったのでしょう。その後、犯人はその装置を一度よくある日用品に変えてから崖の下へと捨てたんです。捨てた後、一度スーツに着替え被害者の男性に呼び出された会社のものだと伝え中に入り、遺体の向きを変え、窓の鍵も閉めて、密室を作り何事もなかったかのように部屋から出て、そのまま着替えてパーティー会場に何食わぬ顔で来たのです。」
質問された。
「しかし、戻ってきたら不審がられてしまうのでは?」
「変装ですよ。犯人は、着ているものから全て変えたんです。」
「なら凶器についていた指紋は?」
「その話にはこのパーティーの主催者が誰なのかが重要になってきます。おそらくこのパーティーの主催者は犯人でしょう。犯人は名前や姿などの全てを変えてはいたでしょうが、中井修也さんの会社の社員でしょう。それで被害者と中井さんの間で取引をしていたことを知ってそれが成立すると都合が悪いことが起きてしまうと思い今回のパーティーを主催して、中井さんもご主人も招待し、ここで中井さんに罪を着せて主人を殺そうとした。だから犯人は中井さんの指紋がついたナイフを凶器に使用したんです。」
「そうだとすると結局犯人は?」
「こんなことができるのは、パーティー開始から1時間も遅刻した三井洋子さん、あなたしかいません!」
とうとう言ってしまった。
「ちょっと待ってください!私のアリバイは確認取れていますし、第一私はあなたに依頼したんですよ?」
「依頼?」
「はい。実は言っていませんでしたが、三井洋子さんは、私の依頼人です。」
「しかし、逆に私に依頼したことで容疑者から外れようと思ったんじゃありませんか?実際私は、依頼人を信じ切ってしまうところがある。それを利用して容疑者から外れようとした。それに加えてアリバイの確認が取れたら自分は確実に容疑者からはずれることができるそう考えたんじゃありませんか?」
「それは全てあなたの妄想です!しかもリスクが高すぎるじゃありませんか。」
「そうそう。言い忘れていました。今回のトリックは自分が実際にあの場にいなくてもできるトリックです。なので、彼女のアリバイは崩れます。」
「馬鹿馬鹿しいは!」
三井さんはかなり呆れている。
「まぁとにかく第二の事件の真相もお話しします。」
「これは犯人にとって予想外の殺人だったのでしょう。おそらく中井さんは途中で彼女が犯人だと気づいたのでしょう。だから彼は彼女を脅したんだ。
「お前が犯人だろ?それでお前はうちの社員だろ?」
と言われ彼女は彼の推理を聞いたんだ。そうすると、彼からこのことを黙る代わりにお前は会社から出ていってもらうとでも言われたのでしょう。
それに怒った彼女は、彼の殺害を考えたのでしょう。
そして彼に睡眠薬入りの飲み物を飲ませ、彼の部屋に連れて行き、自殺に見せるために彼を天井から吊し、クロロホルムを部屋に充満させ彼を殺害したんだ。」
三井さんはまた呆れた顔でこっちを睨みつけてきた。
「証拠を見せなさい!私が証拠だというものはどこにもないわ!」
私は深呼吸した。
「先ほどもいいましたよね?第二の事件は予想外の殺人だったと。あなたは一つ重大なミスをしてしまったんです。」
「ミス?」
「人の足には指紋と同じく足紋というものがあります。あの部屋で踏み台を使うには、靴下を脱がないといけないと思い、踏み台を調査してみたら案の定出てきましたよ、あなたの足紋が。」
私は、彼女が自白してくれることを願った。
「あーあ。もうおしまいか。」
彼女が話始めた。
「そうよ!私が犯人よ!私がみーんな殺しました〜!」
「あの取引が成立すれば、私たちの会社は絶対終わると思ったし、また大事な人が奪われる気がした。だから殺してやったのよ!!」
私は彼女の話を聞いて呆れた。
「自分から11514161254504235251934404328513、つまり、『あなたはこどくになるでしょう』なんて送っていますけど、逆にあなたがこうなってしまいましたね」
「それとどんな理由があろうと、人を殺しちゃいけないんです!それは絶対守らないといけないことなんです!人が人の命を奪っていい理由なんてどこにもありません!」
私の目からはずっと堪えていたものが込み上げてきた。
こうして悲しい苦しい思い出を残しながらこの事件の幕は降りた。
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