第6章 証拠
1
決定的な証拠がなんとしても欲しい。
今後また新たな被害者が出る前に、私たちはこの事件に区切りをつけないといけない。
あと一歩のところまでは来ているのになぜいつもここで詰まってしまうのだろうか。
しかし、凶器以外なにが証拠になるのだろうか?
私はこういう殺人事件の捜査には慣れていない。
今まで私は精一杯やってきたつもりだが、もう嫌になりそうなくらいいろいろなことが起こりすぎている。何かが起こるたびに私の頭は、混乱してくる。
2
なんの進歩もない。
行き詰まっていたその時だった。
菜穂子さんが言い出した。
「犯人にとって計画になかった犯行は第二の事件。なら第二の事件の方が、証拠が出てきそうな気がします。」
「それは、私も思いました。何回チェックしても損はないのでもう一度、四条さんの部屋もチェックしてみましょう。それなら一度四條さんの部屋へいってみませんか?」
「そうですね。早めにいった方が良さそうですし。」
それにしても、いままで色々な捜査を二人でしてきたが、人数がやはり足りない。一体いくら待てば警察が来てくれるのだろうか。
3
「もう一度部屋の確認をしてもいいですか?」
「またするつもり?」
「ええ。中井さんが亡くなり、三井さんのアリバイも確認された中、今となってはアリバイがなく犯行が可能なのはあなたしかいないんですよ。」
「あなた探偵なら少しぐらいはミステリー読んでみたらどうなの?こういう場合は、アリバイがある方を疑うのが1番なんじゃない?」
「それはあくまでも小説やドラマの中です。ここは現実世界です。」
「あらそ。まぁ私は別に殺人なんてしてませんから自由に調べてみればいいわ。」
こういう長い話が1番嫌いだ。むしろ、やましいことがなければ、普通に入れてくれればいいじゃないか。
そんなことを頭で考えながら、私は部屋の中に入り捜査を始めた。
探していると妙なものが出てきた。
私は彼女に聞こえないように小声で菜穂子さんに話しかけた。
「あの。これって中井さんの部屋にあったものと似てませんか?」
「そういえば似てるわね。」
「こんな偶然ってあるんでしょうか?」
「とにかく、これがもし中井さんの部屋になかったら、これは少しだけでも証拠にあるかもしれない。」
「私確かめてきます!」
私は、彼女の部屋を出ていき、中井さんの部屋へと向かった。
私は、できる限り物に触れることのないようにしつつ、彼女の部屋にあった物と同じようなものがあるかどうかを探した。
「なくなってる...」
私は、ふとあることを思い出した。
確か彼女は第二の事件があった時、私が現場に到着した後に現場にやってきていた。
そうだとすれば、彼女はこれを第二の事件の前つまり中井さんが生きているときに彼の部屋に行って取ったということになる。
私は、もし彼女が一回ここにきていたのであれば、この部屋からもう少しなにかが出てくるかもしれないと思い、この部屋も確認した。
4
探していると誰かが私のことを呼んでいることに気づいた。
そしてその声はだんだんと近づいてきていた。
「あー!唯さんこんなところにいらっしゃいましたか。」
執事の人だった。
「わかりづらいところにいてすみません。」
「いえいえ」
「どうしたんですか?」
私は要件を確認した。
「先ほど、警察の人が到着されました。」
「そうですか!連絡ありがとうございます。今どちらにいらっしゃいますか?」
「一応今大広間にお通ししました。」
「ありがとうございます。」
私は大広間へと向かった。
5
大広間に行く途中、菜穂子さんにも警察が到着したことを伝えた。
「こんにちは、探偵の井上唯です。」
「元刑事で、今まで唯さんと一緒に捜査してきました、大岩菜穂子です。」
「よろしくお願いします。県警本部の大桐と中岸です。」
「早速ですが、状況を詳しくお伝えしていただいてもよろしいですか?」
「あっはい。」
私は、今まで起きた事件についてや私たちが四條さんに絞った理由などを説明した。
「なるほど。状況はわかりました。あなたの話によれば、アリバイの確認も取れず、犯行可能な人物で、しかも動機があるのは四條さんしかいないということですね?」
「はい。なので今証拠を探しているところなんですが、一つヒントになりそうなものを見つけて詳しく調べているところです。」
「わかりました。とにかくいま到着した我々は証拠探しに手伝うと逆に迷惑をかけることになりかねませんし、証拠探しはお任せします。なにか必要なことがあればお知らせください。」
これで話は終わった。
私はもう一度、中井さんの部屋へ向かった。
少しでも多く証拠を見つけるために。
また捜査をしに部屋へ戻ると、第二の事件が発生した時みたいに踏み台が気になった。
踏み台を使うとき裸足になった可能性が高いと思った私は、この踏み台を調査してみることにした。
ここから四条さん足跡が出てくれば、決定的な証拠となる。
そうすれば、この事件にやっと終止符を打てると思った。
しかし、私はこの後衝撃の事実を耳にすることになる。
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