第5章 捜査
1
真っ白だった私の頭を私は必死に元に戻そうとした。
しかし、なかなか戻らない。
私がそんな中捜査をしていると、後ろの方から話しかけられた。
「あら、あなたにしてはずいぶんと時間がかかっているわね。」
菜穂子さんだ。
「もう体調は大丈夫なんですか?」
「ええ。3時間ほど休ませてもらったから。」
「3時間!?」
「そうよ。私が倒れてから少なくとも3時間はたっているわよ。」
私は頭が真っ白になりすぎて、時間の感覚を失っていたらしい。
結局3時間何も見つからないままたってしまった。
私は一度部屋をでて外の空気を吸いにいった。
なんだか外の空気が美味しく感じられた。
2
気分転換をして、もう一度捜査を開始すると、気になる点が何点か見つかった。
「気になる点は三つ」
「一つ目は踏み台にしたはずの椅子の置き場です。普通椅子を倒してもそこまで死体から離れないはずです。それなのにあの椅子は少し離れている。そして二つ目が、床においてある遺書です。これはどう見てもワープロで打った字にしか見えません。そして最後がなぜ第一の事件現場にあったクロロホルムの瓶をわざわざ使用したかです。」
「別にクロロホルムの瓶は被害者の中井さんが、第一事件の犯人であるなら使用していてもおかしくないのでは?」
「それならどうして、遺書をワープロで打たないといけないんですか?」
「私が思うに、犯人は、第一事件の犯人を中井さんにしたてたかったんでしょう。そして、証拠が出てきて、疑いがかけられたところで自殺したと思わせたかったってところでしょう。これを考えると椅子のことも遺書のこともクロロホルムに瓶に関しても全ての辻褄が合うとは感じませんか?」
「なるほど」
「つまり今回の事件は自殺ではなくて他殺。そして犯人はおそらく第一事件の犯人と同じでしょう。」
やっとここまできた。それでもまだ犯人が捕まったわけではないと思うと気が遠くなりそうだ。
「あなたの推理が正しいとすると、容疑者は四條さんか三井さんのどちらかということか」
「そういうことになりますね」
一歩ずつ着実に真相へと近づいている。
3
ここまできているのに、ここから先を絞り込むことができない。
第一の事件の犯行が可能なのは、四条さんと三井さん。
三井さんは依頼人なのでありえないと思うが、探偵として、そんな考えがあってはいけない。
かと言って、第二の事件は廊下の見張りもいないため、二人とも犯行可能となってしまう。
そんなときだった。
「唯さんいらっしゃいますか?」
「あっはい」
三井さんだ。
「どうしたんですか?」
「実はずっと言おうと思っていて、言えていなかったことがあるのですが、お話してもいいですか?」
「ええ。もちろんです。」
「実はよくよく考えてみるとあの時、私怖くてしかもちょっと動揺してて、電話の相手の名前を間違えて言ってしまったみたいなんです。」
「えっ!では実際誰と電話していたんですか?」
「友人の和田穂乃果です。」
「和田穂乃果さんですね。確認してみます。」
やっと犯人を一人に絞れるチャンスが来た気がした。
「菜穂子さん!三井さんのアリバイの再確認お願いしてもいいですか?」
「ええ。別にいいけど。」
4
菜穂子さんに再確認を頼んでからもう1時間以上経っている。
私はその間、四条さんについて探っていた。
四条さんの母親の事件について色々な資料を引っ掻き回した。
どうやら四条さんの母親と第一事件の被害者は、同じ会社の社員だったみたいだ。
色々な資料に目を通しながら時間を潰した。
「アリバイの確認できたわよ。犯行時刻の時ちょうど電話をしていたそうよなので彼女のアリバイは成立よ。」
「ありがとうございます。これでやっと犯人を絞れましたね。」
「ええ。ここからは証拠探しね。」
「凶器からの指紋は中井さんののみだったみたいだし。」
「そうですね。」
私は少しほっとした。あとは証拠探しをして終わりだと自分に言い聞かせ、一つ大きな深呼吸をした。
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