第2章 パーティー


 私は、看板を通りすぎ、会場のエンタランスにたどり着いた。受付の前には長い列ができており、私は最後尾に並んだ。帳簿に記帳し、会場に入るとすでに大勢の人が到着していた。昨日既に出発しているはずの洋子さんを私は探したが、彼女の姿を確認することはできなかった。そんな私に違和感を感じたのか一人の女性が話しかけてきた。


「誰かお探しですか?」


私はすぐに違うと答えた。ここで洋子さんのことや私のことを明かすのは危険だ。すると目の前の女性は続けて私に質問してきた。


「あなた私とどこかで会ったことあります?」


私は、びっくりした。私は目の前の女性と以前会ったことがあっただろうか。私は過去を振り返ってみたが、彼女と思われる人物はあがってこない。


「多分ないと思いますけど...」

「そうですか...あっ自己紹介が遅れていましたね、私の名前は佐藤千賀子です。」

「千賀子さんよろしくお願いします。」


軽い挨拶だけすると私は一旦その場から離れた。色々詮索されても大変だ。彼女には申し訳ないが致し方ない。

 パーティーの出席者はかなりの人数を超えていた。どこかの大学のサークルらしき団体や明らかに警察関係者のような方々などとにかく沢山の方が年齢、性別問わず揃っていた。私は今までこんなにも大勢の方を招待できるほどの経済力がある人と会ったことがあっただろうか。全く思い当たる節がなかった。

 それから程なくして照明が暗くなりパーティーの開始が告げられた。主催者は姿を見せず音声だけで参加していた。後からサプライズとして姿を見せるのだろうか。そんなことを考えていると私たちは違う部屋へと誘導された。

 部屋には沢山のテーブルが並べられていた。どうやら参加者は既に各テーブルに割り振られているらしい。私はテーブルの上に置かれたネームプレートを確認しながら自分の席を探した。自分のテーブルを確認すると偶然にも千賀子さんが同じテーブルに座っていた。軽い挨拶をすると私は自分の目の前の席のネームプレートに「三井洋子」と書かれているのに気がついた。しかし、とっくについているはずの洋子さんはまだ来ていない。何かあったのだろうか。私はその時何かが起きるそんな予感がしていた。

 同じテーブルになった人たちは私から見て斜め左からフリーターの遠藤良介さん、医者の鳴海快斗さん、弁護士の斉木香代さん、元刑事の大岩菜穂子さん、大学院生の中冨龍弥さん、そして、教師の佐藤千賀子さん、主婦の三井洋子さん。

 私たちは、軽い世間話などをしてお互いの仲を深めていった。


2


 食事が済んでも私たちの話は尽きなかった。大岩さんがおった事件や大学院で何の研究をしているのかなどどれもたわいもない話ばかりだった。


「あのー、今回の主催者って誰だか知っていますか?」


一応聞いてみた。もしかしたら有力な情報をゲットできるかもしれない。


「私も気になってました。誰か知ってます?」

「僕も知らないです。」


やはり皆さんも知らないようだった。この感じでいくと主催者は誰にも正体を明かしていないのだろう。


「そうなんですね」


とだけ答えて私は考え込んだ。皆さんはまた会話に花を咲かせていた。


「そういえば今日何時に終わるか知っていますか?」

「そう言われてみれば何も書かれていませんでしたね。」

「お話中申し訳ありません。もう一つ聞いてもいいですか?」


私はどうしても確認しておきたいことがもう一つあった。


「構いませんよ。」

「手紙のどこかに数字は書かれていませんでしたか?」


皆さんは急に黙り込んでしまった。先程まで笑顔だった皆さんの顔に笑顔はない。


「11514161254504235251934404328513みたいな数字は書かれていませんでしたか?」


沈黙が続く。


「私のにも書かれてありました..........」


この沈黙を最初に破ったのは大岩さんだった。それに続くようにして他の方たちも書かれてあったと答えた。どうやら謎の数字は全員あったようだ。ということは招待されたみんなに関係しているのだろうか。その答えを聞いて再び私は考えにふけった。

 やがて、白いドレスにパールのネックレスとイヤリングを身にまとった綺麗な女性が入ってきた。洋子さんだ。私はその美しい姿に見惚れてしまった。彼女はすぐ私に気付き会釈をした。


「こんにちは、遅れてしまって申し訳ありません。三井洋子です。」


洋子さんは皆さんに向かって丁寧に挨拶をして腰を下ろした。


「よろしくお願いします。」

「どうしたんですか?」


私は怪しまれない程度に聞いてみた。


「ちょっと、いろいろトラブルがあって。」

「そうですか」


他の方たちはそんなこと関係なしに再びに話に戻っていた。

 しばらくして照明が暗くなり、ビンゴ大会が始まった。ビンゴのシートが私の元にも回ってきて私たちは楽しいひとときを過ごした。


 このとき、私は事件の幕がもうすでに上がっているとは全く思ってもいなかった。



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