詩麻の誘い

「ふぁ〜ぁ、ん?あぁ、やったなこれ。」


昨日そういえば沙姫のこと壊すぐらいの勢いでヤッたな。裸だし。自分が裸のままということは、勿論沙姫も…ほらね、裸だ。


胸の先端つついてみようか悩んでいたら、沙姫がゆっくりと目を開けた。


「ん〜。おはよぉ…って裕太?どこ触ろうとしてんの!?」

「あ、バレた。いや、胸触って起こそっかなぁって…」

「ダメに決まってるでしょ!朝からエッチなことはしない!早く服きて!」

「は〜ぃ。すいませんでした。」


沙姫に怒られながらベッドを抜け出す。沙姫は裸のまま恥ずかしがりながら部屋を出ていった。


朝からシャワーを交代で浴び、朝ごはんを食べてそのまま出勤する。


「行ってくる。」

「あ!まって、行ってらっしゃいのチュー♡」


ちゅ♡


付き合い始めてからは欠かさずにする。そして幸せな気分のまま会社に向かう。


会社についたら、いつも俺のデスクには、絢香がいる…はずなんだが。あれ?誰だあれ…。


俺のデスクには、俺が面倒を見ていた後輩の、詩麻がいた。


覚えているだろうか。映画を見に行った時にばったりあった後輩。そう、その後輩がいたんだ。


「先輩!おはようございます!」

「お、おぅ、おはよう。」


やけにテンション高いな。どうしたんだろうか。


「先輩、昨日絢香さんと飲みに行ってたんですか?」

「まぁ、いつもの店に行ったな。(気づいたら家にいたけどな。)」

「なんで私を誘わなかったんですか?」

「え、逆になんで誘われると思ったんだ?」

「ええええ!?誘わないとかある!?」

「ええええ!?じゃねぇから、誘うわけないだろ?絢香は同期だから行くだけだよ。そもそも彼女いるんだし。ほかの女誘わねぇよ。ほら席もどれー。仕事しなさい。」


絢香が、沙姫の母であることは隠して言い訳を述べる。いや、言い訳っていうか、誘わないだろ普通。


「同期だからですか…。なら、後輩として連れてってくれても構いませんよね?私は先輩から色々教えて貰ってたんですから。」

「うっ、そう言われるとなぁ。」


痛いところついてくんなぁ。


「あ〜、でもな。やっぱり彼女いるからさ、きついと思うな。絢香は彼女も認めてるしさ。な?」

「へぇ〜。彼女さんは絢香さんのこと知ってるんですか?」

「知ってるぞ?」

「ふ〜ん。分かりました。」


そう言って自分のデスクに向かって行く後輩。よしよし乗り切った。そう思ったのに、あろうことか後輩は、絢香のところに行って、


「絢香さん!裕太先輩の彼女さんの連絡先下さい!」


そう言いやがった。絢香なら渡すだろう。ほら見てみ?こっち見てニヤニヤしてんぞ。あ〜紙に書き出した。あ〜終わった。


頭抱えていたら俺のスマホにメッセージが届く。誰だよ。お前かよ!


『絢香:詩麻にあげちゃったよ?』

『裕太:あげちゃったよ?じゃねぇよ。どーすんだよ。めんどくさい事なるぞ。』

『絢香:あ〜楽しみ♡どんな展開だろうねぇ。WAKWAK』

『裕太:はぁ、いい歳した大人がギャルみたいなメッセを送るな。キモイぞ。』

『絢香:相変わらずつれないねぇ。まぁ、まだ沙姫が私の娘って伝えてないから、バレないように頑張れ〜。(^^』


ちっ。やりやがった。てか楽しんでるなあいつ。はぁ、最悪だよ。


昼休憩になった。案の定俺のところには後輩の詩麻がいた。それを遠巻きに見てニヤける絢香。あいつ性悪だよな。


「先輩!彼女さん沙姫ちゃんって言うんですね。」

「そうだな。」

「先輩は、沙姫ちゃんのどこが好きなんですか?」

「全部。」

「全部ってわかんないですよ。1番はどこなんですか?」

「料理が美味いとこ。」

「へぇ、先輩を落とすなら胃袋から。」


これなんの時間?拷問?なぁ、絢香助けて?アイコンタクトしても伝わらないんだろうな。


「じゃあ、朝の質問に戻るんですけど、なんで私のこと誘わなかったんですか?」

「答えたよな?彼女がいるからだよ。」

「もう沙姫ちゃんって名前で呼んでもいいですよ。隠さなくても名前知ったんで。」

「あぁ、そうだな。沙姫がいるからに決まってるだろ。」

「じゃあ、沙姫ちゃんがいなかったとしたら誘います?」

「誘わないな。」

「なんでですか!」

「いやだから、なんで誘われると思ってるの?」

「え、私言いましたよね?先輩のこと好きって。」

「うん。聞いたぞ。」

「なんでなんですか!普通、1回ぐらい誘いに行きません?行きますよね?」

「行かないな。」

「はぁ?」

「いや、俺は誘わないぞ。めんどくさいし。」

「へぇ、そうなんですか。分かりました。少し待っててください。」

「お、おぅ。」


何するんだろう。嫌な予感がするんだよなぁ。スマホに目を落として、指を動かし始める詩麻。


ときどき手を止めてはまた動かしてを繰り返す。


しばらくして、俺に画面を見せながら話しかける詩麻。


「先輩。今日は私の奢りでいいので、飲みに行きましょうね。」


ニコッとしながらそう告げる詩麻。見せられたスマホには…


『詩麻:裕太先輩に、恋愛のこと教えたいから今日飲みに連れてっていい?』

『沙姫:え、教えてくれるんですか?』

『詩麻:もうバッチリ教えてくるね。』

『沙姫:お願いします。』


あれれ、沙姫さん?何認めてるの?しかももう後輩タメ口だし。仲良くなるの早くない?


「分かりましたね。今日は飲みに行きますよ。」


そう宣言する詩麻に俺は頷くことしか出来なかった。


ちなみに絢香は、わかっていたのか終業間際に俺の肩をポンと叩いてきた。


裏切り者め。覚えてろよ。


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