絢香の思い

「おぅ、おはよ。」

「裕太!ご飯作ってくれたの?」


もう呼び捨てかよ。早いなおい。


「ってなんだ、目玉焼きトーストか。」


なんだってなんだよ!これでもれっきとした朝飯だろ!


「もっと凝ってるのかと思ったよ。そんなわけないか。だって料理しなさそうだもん。」


ふん、余計なお世話だ!


「これから毎日作ってあげよっか?今日はもう間に合わないから作れないけど明日から早起きして弁当も作ってあげる。」


女神か?


「嫌ならいいんだけどさ。」


嫌とは言ってない。


「なんか言ってよ!」

「あ、すまん。一人暮らしのくせで心で思うだけで留まるんだよな。」

「で、いるの?」

「いります。受け取ります。ありがとう。」


朝飯を一緒に食って、そのまま俺は仕事に行く。


「行ってらっしゃい。」

「おぅ。」


久しぶり行ってらっしゃいとか言われたな。やばいやばいまたにやけてるよ。自重しなきゃ。



「おい、絢香。お前はいいのか?」

「何がよ。」

「沙姫の事だよ。俺なんかの家に住ませていいのか?」

「いいんじゃない?あの子ずっと前からあんたのこと好きって言ってたしね、なんでかは、知らないけど。」

「なんか、前に俺が子供助けたのを見てたらしい、その時に好きになったって言ってたぞ。」

「なるほどね。あの子らしい。でもよく考えて?裕太私にそうやって聞いてるけど、あの子もう19よ。好きな人のとこで暮らすことがどういうことなのかわかってるはずよ。」

「そうだけど…。」

「あんたがあの子の事を大事にできないって言うなら早めに別れを切り出してちょーだい。大事にするなら責任取ってもらうから。」

「…は?責任?待て待て、結婚ってことか?」

「まぁ、行く行くは、ね?」

「…そうか。そうだよなぁ。まぁ、俺はまず沙姫のことをよく見て好きになれるかどうかを確かめないといけないからな。それで好きになってしまったのなら責任は取ろうと思うよ。まぁ、あっちから離れていくのなら俺は止めないけどな?」

「あんた意外と決断早いのね。」

「まぁ、俺もそろそろ結婚したいと思ってたしな。」

「それもまた早いわね。あんたまだ27でしょ。」

「結婚は早めにしたいんだよな。」

「ならいいんだけど」


沙姫への対応意外と荒いな。絢香仕事真面目なのに、でもまぁよく考えたらそうだよなぁ。沙姫も19だもんな。自分なりに色々覚悟決めて来てるよな。


俺は沙姫のことどんなふうに思ってるんだろう。


可愛い。めっちゃな。美少女だもん。料理美味い。少し口が悪い気もするが、性格も良さそうだもんな。肯定が多いな、これは好きってことなのか?


恋愛経験が少なすぎて好きというものが分からない。そんなことばっかり考えていたら仕事が手につかなかった。


「ただいま。」

「おかえり。」


おかえりと返されるのも何年ぶりなんだろうか。なんとも言えぬ嬉しさが込み上げてくる。


「なぁ、沙姫。俺はこれからお前と過ごして行く中で、お前に惹かれていくんだと思う。でも、まだ沙姫の覚悟を受け切れないとこもある。だけど俺も覚悟を決めてこれからちゃんと沙姫と向き合うから、よろしくな。」

「ぇ、な、え。う、うん!よろしくね。」


テンパってるのも可愛いな。


あ、そうだ、鍵を渡しとこう。それと…


「沙姫、連絡先交換しとこう。なんかあった時のために。」

「そうだね!そうしよ!ん?これは?鍵?いいの?」

「鍵がないと何かと不便だろ。」


俺の声が聞こえてないみたいだ。小学生が宝物を見つけた時のような顔をして鍵見つめている。そんな嬉しいか?


「なぁ、お前はどこまで覚悟を決めてここに来たの?」

「え、そりゃ、裕太を貰うぞって覚悟。」

「普通それ、男が言う言葉じゃない?」

「う、うるさい!それぐらい覚悟があるんだよ!」

「わかった。ありがと。でも、まだ好きになったってわけじゃないから、頑張れよ?」

「…うん。」


こうして同棲生活への覚悟が決まった俺だった。


裕太は、知らないが、この日沙姫は夜這いを考えていた。

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