元魔王子は、ぐうたら魔王を倒したい。

宮代魔祇梨

プロローグ

「──我は、遠からず旅に出る」


 低く、そしておごそかに、その声は魔界全土に響き渡った。


「我はもう老いた。一度ひとたび旅立てば、二度とこの座へと戻ることはないだろう。……ゆえに、我はこれより後継者を指名し、王位継承の儀を行うこととする」

 老いてなお衰えというものを感じさせない絶対的な覇者の声は、しかし自らの滅びを予告し、あまつさえ自ら王の座を退く旨を宣言してみせた。


「ふっ……」

 傍に控えていた若い男が、の王の言葉を受けて、静かに唇の端を吊り上げて笑った。


「我の後継者たる新たなる魔王、その名は──」

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