第7話 編入生は蝙蝠2


私は帝都に着いた。列車をずっと乗ってたせいか汚い空気でも美味しく感じる!

何とか人を避けて駅に出れば人がめちゃくちゃ多い!

まぁ、国の中心地なのだから当然だけどね


よく見渡すと疎らだけど軍大学生がいる

その服装は私とは少し違う

私のは濃紺だけど彼らのは濃い青褐色

カーキーといえばそうだけど、茶色味が少し強い感じがする



駅から出てバスに乗って17分。第1軍大学に着いた

どうやら新1年生の寮入日らしく慌ただしそうだ

私は元々、部屋番号と寮は知ってるので気にせず通る

すると学生に絡まれた


「あんた編入生?」

「そうですが?」


みんなが嘲笑っている。これくらい慣れている

そもそも、私の家はこれよりもっと酷い

いつ殴られるか?いつ殺されるのか?其れを気にしてないと生きていけない。あの家は魔力のない私に人権などないのだから

嫌な事を思い出させられたけどあれよりはマシだと思うと何も思わなくなる


「あんたここに何しに来たの?田舎に帰ったらぁ?」

「……そうですね。実家から近くなったのは死ぬほど嫌ですからね」

「は?」

「いえ。なんでもないですよ?それよりも通してくれませんか?これから呼び出しがありましてね」


「呼び出し?!あんたみたいな田舎者にそんなことあるの?」

「ねぇだろ。こんなひ弱なやつ」



彼らの後ろから1人の男子学生が来た

この距離でもわかる。超絶イケメン。うむ、さすが帝都!

「呼び出しなんて嘘ついて馬鹿??まぁ、あっても?通さないけどな」

そう言ってドヤァとされてもただのバカにしか見えない


「そうですか」

私は荷物を持ち直して、後ろを振り向いた

そもそも伝言通り待ち伏せは予感していた。だから時間は20分多く取ってある

分かりやすく通さないと言ってくれたのはありがたい


すると電話が鳴った

『はい。紅月です』

『久しぶりだな。紅月希空さん』

『……あっ。あの時の…』

『ああ。黒柳くろやなぎ 蒼人あおとだ』

『その、なんの御用で?』

『その……。今どこにいる?』

『え?ああ。第7棟前ですが?』

『その、寮の場所が違くて……』

『……え?』

『第1棟に行ってくれ!!!』

『え???』

すると電話が切られた。めちゃ、恥ずかしいそうな黒柳さんが頭に浮かぶ。あの茶髪に新緑の瞳のクールイケメンが照れてるのは萌だな。うん萌だね

「萌だね………」


まぁ、どの道私が行こうとしていたルートは第1棟を通るので別にいいけど

ああ言うタイプは甘い物好きだったりするんだよね

そう思っていると地図が送られてきた。こういうところ忘れてないのは普段からしっかりしてるからなんだろうけど


しばらく考え事をしながら無事着くと

その雰囲気の違いに驚いた

第7棟は近づいてもなんも思わなかったけど第1棟は明らかに近づき固さがある



私は指定されている部屋に向かった

812号室の前にたどり着き、私は紙と番号を2度見し合っていることを確認した

鍵であるカードを翳すとガチャッという音ともに空いた

その間からはマロニエの匂いがする。家の裏の木にひっそりと知らず知らずにあったマロニエは私にとって苦手な匂いを放つ花

私は当然、顔を顰めた。きっと同居人がマロニエの木が近くにある所を通っただけだと思いながらドアを開けた



するとそこには抱き合っている男女がいた

男女も固まっていたし私も固まっていた

「………………え?」

私はドアを閉めた。そして固まった

「…………え?やってたよね?間違いなく?多分?もしかして部屋間違えたとか?」

私は紙を再び取りだし確認する。どうにも間違っていない。となると黒柳さんが間違えた説もある。当人に聞いてみるのが1番



私は黒柳さんに電話をかけた

『はい。黒柳です』

『あ、すみません。お忙しい中……』

『いや。それで何かあったのか?』

『……えっとですね。……所定の部屋に来たら2人の男女が抱き合っていまして……』

『…………それで?』

『部屋の番号を間違えてた可能性もあると思いまして確認をしようと思ってお電話をおかけしました』

『………そうか。番号は812です』

するとガサゴソという音たてながら少し時間が経った

『……いや、間違ってはいない。こちらの方でもそれであっている』

『……そうですか。ありがとうございます』

『いや。なんかそのドンマイだな』

『ははは。そうですね。人生1の衝撃でした』

『そうだろうな。では切るぞ?』

『はい。ありがとうございました』


電話が切れたのだった

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