第1話 軍人という道
『神は万物を与えず』という言葉があるがそれは嘘だろう
万物を持つ人間はいる。たまたま生まれていた場所や器がより良いものであればあるほど万物を得る
それはある意味、運であり魂が器を探した結果の末路
私…
この世界には魔素がある。魔素は魔力の根源であり
そして父は魔道特殊部隊で母は魔道医師。そうなれば多大な器を持つ子供が生まれるのは必然
それなのに私は小さい器だった
当然、母は不倫を疑われDNA検査をした
結果、親子関係があることが立証された
要はまたま生まれた能無しだと分かった訳だ
それからの両親は私に虐待の限りをついた
私が9歳の時、弟妹に訓練道具として扱われ殺されかけたこともある
そんな私は感情が欠落してるのを自負している
また、殺されないための術を得るために私は知識を磨いてきた。だから人よりも頭はいいし勉強だって90点以下は絶対になかった
私の知識や成績は両親からの暴力から逃げるためであり生き残るためでもあった
それが両親からの解放という確定要素が入ったことで、初めて私は普通の高校三年生が考える『何になりたいか?』に行き着いた
それはいい事なのだろう。死から逃げなくていいのだから
でも、今までそれだけをしてきた人が急にしなくていいと言われて混乱したり分からなくなるのは当然だった。それは私も同じだった。良きことに変わると夢のように錯覚するのは本当らしい
そんな私は迷いに迷って親友こと
親友は魔道士適正があり、魔道医者を目指している
頭もよく私の家庭環境も知っている
時に正しい答えをくれる親友はありがたい
彼女以外にも友達はいるけど信頼はしていない。信頼する友達は彼女だけ
そして現在に至る
私たちはカフェで4人席に座って飲み物を飲みながら話している
「それで困って私に相談しに来たわけ?」
「そう」
「簡単じゃない?軍人になれば?」
そういとも簡単に答えを言う親友に私は驚きパチパチと瞬きした
「何驚いてるの?」
「いや、時間がかかると思って……」
親友はため息をついた
「そんなにかかるわけがないでしょ?」
「そう?」
「うん。希愛ってさ。頭脳明晰、冷静沈着でしょ?なら、指揮官とかの上の役がよく似合うと思うけど?」
「確かに給料は固定だから困ることは無い」
「うん。それに希愛のやってきたことが生かせる」
「いいね」
「でしょ?前から希愛は策士向きだと思ってたんだよね」
「さすが吏音だね」
「ふふ。でしょ?」
「ケーキひとつ奢るよ」
吏音は甘いもの好き。クールな印象だからコーヒーとか好きそうだけど意外と甘いもの好き。小動物も好きなのだから誰よりも女の子っぽい
そう私は思ってる。だからケーキをお礼にやるととっても喜んでくれる
「やったぁ!!」
私はメニュー表を出し、吏音に見せた
「何食いたい?」
「いちごのチーズタルト」
「おk。買ってくる」
私はレジカウンターに向かった
私はいちごチーズタルトを買い頼み、吏音のところに置いた
吏音は目をキラキラさせている。やはりギャップ萌えと言ったやつだろう。可愛い
吏音はホークで大きく1口を取り頬張る
「んーー!!!美味しい!!!」
「良かった」
「この甘酸っぱさとチーズの芳醇な香り!そしてこのサクサクなタルト生地!さっぱりしていていちごの甘酸っぱさがちょうどいい美味しいケーキね!」
吏音は美味しいものを食べると食レポするくせがある
美味しいものは共有したいタイプ
吏音の心からの笑顔は心をスカッとさせる
心から笑おうと思えるそんな笑顔。私はそれが好き
「こんな美味しいケーキ奢ってくれてありがとう!」
「いいの。吏音にはいつも助かってるから」
「そんなことないよ。偉そうに言葉で言ってるだけで希愛なら少し考えれば出てくるよ」
「それでも私が助かってるの。だから気にしないで食べて」
「ふーん。まぁ、希愛が嬉しそうならいいっか」
吏音は少々不満気味みたいだったけど私の表情を見て諦めたみたいだった
それからしばらく経って私は第3帝国立軍大学校に合格した
魔力検査では凡人だけど筆記試験ではトップ争いに食い込む程の成績を残した
能力はなくとも頭脳はあることを証明して見せた
少なくともこのまま努力すればまあまあな科には入れるはず
私は見事に特殊魔道通信科に決まり、私は軍大学に向かう道を歩いている
その道中に魔法薔薇が咲いていた。魔法バラは魔力を持つ薔薇で薔薇自体がバラの色に沿って淡く光る
今、私が見ているバラは青薔薇。魔道薔薇だけしか青くならないので珍しい。それも40年前は存在しなかった花だ。だからなのか芳香も独特でこの花自体も他の薔薇とは一線を引いて違う気品がある。見たことはないけどそう認識している
「
私は思わず声に出してしまった
やっぱり綺麗………
私は薔薇に見とれた。そして薔薇の匂いを嗅ごうと1つの薔薇の房に近づく。少しその芳香に浸たった
その匂いに浸る。高貴なんだけど優しくて少し甘い匂い。私の好みの匂いだった
私は薔薇から手を離した。しばらく目を閉じて冷静になったあと道に戻り歩き始めた
昨日、私は寮に荷物を運んで準備を終わらせた。その時になって『軍大学に受かった』ということをより実感したけどこの歩いている道中でさらにそれを実感する
私が通っていた学校からするとそこまで難関ではない。先生にAOではなく一般と言った時はびっくりされた。まぁ、変といえば変だけど軍大学というところは実力を測ってから部隊を決める
だから入試の時から頭が人一倍良いといことを示すのは頭に残りやすい。そう私は考えた。調査書を見て実力を知ってるだけとは大違いだと思いたい……。何となく見え透いていて恥ずかしいのはあるのさ……
そう思っているうちに学校が見えてきた
赤の対魔道耐火レンガと(鉄よりももっと耐久力がある)魔道鉄出できた門がドン!とある
さすが、軍大学!重厚感と重要性がひしひしと伝わってくるね!
さらに前に進むと例のレンガと厚い魔道印付きのガラス窓がある校舎が見えてきた。校舎は5つほどありそれを2階と1回で繋いである
恐らく遠くにも小さな建物などがあるんだと思う
私はそれに圧倒されつつも校舎に入った
そして書類提出と氏名の記入を終えたあと、私は入学式の会場に向かった
入学式はこれといったことは無かった。校長先生にお偉い人の話に在校生と新入生の答辞と挨拶があっただけ
ひとつあるとしたらそれは新入生……首席の子
美形に高成績に魔道能力が高い。獣人みたいだから身体能力も高いんだと思う。憧れの対象ではあるに違いない。それに話によればとある理由で第1から第3に変えたらしいのだから凄い人なのだろう
近付かないでおこう。あれは危険……
何か裏がある。多分
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