第6話 受付達の時間
「何か変な二人組みでしたね、ローザ先輩」
イキョウとソーエンを担当した、ローザという名の受付の周りに他の受付二人が集まる。片方は若い女性職員で、もう片方は真面目そうな中年の男性だ。
今ローザに話しかけたのは若い女性職員だった。
「見た目だけで判断してはいけませんよ」
「いやぁ…見た目で判断して良いレベルだったと思いますけど……でも、先輩が認めたなら安心です!!」
冒険者ギルドには様々な理由を抱えた人が集まる。しかし、全てを受け入れるわけではなく、ある力によって本人たちが知らない間にふるい分けがされる。そのふるい分けは審議師という資格を持つものによって行われていた。
審議師とは、嘘を見抜く魔道具の指輪と真実を引き出す会話術を用いて、対象が白か黒か判断する者のことで、どのギルドでも最低一人以上雇用することが義務付けられている。
ちょうどイキョウとソーエンを担当した受付が審議師であった。
「嘘偽りなく正直に話すお二人でした。まあ…正直だからと言ってペンを折って良い理由にはなりませんが…」
「ホントですよ!!あれ私が昨日買出ししてきた新品だったのに!!しかも怪しい見た目でペンをバキバキ折って、何考えてるんですかあの二人は!!傍から見てて意味不明でしたよー、めちゃくちゃ心配しましたよぉー」
うぅと小さな声を漏らし、審議師の女性を見つめる女性職員。登録作業中、あの怪しい二人組みに暴れられて先輩が怪我をしないかずっと心配していたのだ。
そんな後輩の姿を見て、ローザは微笑みながら「大丈夫ですよ」と慰める。
「しかし、羽ペン4本で金貨一枚とは…うちのギルドがそんな高級品を使っているとは知りませんでした」
二人の姿を見ていた、真面目そうな男性職員は冗談交じりにローザに言う。
「お灸を据えるために多く請求しただけですよ。他にも払わずにごねさせて、人となりを見ようとしたんですけど、あんなに素直に払うんですもの。なんかおかしくなっちゃって。帰ってきたらちゃんと差額は返しますよ」
審議師の女性はフフっと笑いながら差額分の金貨一枚をカウンター下の金庫に入れる。
「ハッハッハッお優しいこと」
「ええ、不当な搾取は審議師の行いとしてありえません。それに新人がファングボア討伐を受けたんです。帰ってきたときにお金がなくちゃ可愛そうじゃないですか」
「見るからに動きが素人でしたからね。あれでは討伐は難しいでしょう」
「先輩たち見ただけで分かるんですか。すごーい」
若い女性職員は他の二人を尊敬のまなざしで見つめる。
「まだ午前中に登録してきた子の方が、立派な立ち振る舞いをしていましたよ」
「あのお2人には失礼ですが、私もそう思います」
「そういえば、午前中に登録した子は結局で1人で行っちゃんたんですか?」
「そうなんですよ、ソロは危険だとは伝えても『大丈夫です』って言って聞かなくて」
「あの子……確かシアスタちゃんでしたっけ。何のクエスト受けたんですか?」
「薬草採集です。初心者向けですし、行き先も比較的安全な近郊の森なので…大丈夫だとは思いますが…」
「あの子の実力ならば問題ないでしょう」
「…そうですね、何せ精霊族ですものね。きっと大丈夫です」
「シアスタちゃんちっちゃくて可愛かったなぁー。ちょっとクールな感じがまたおしゃまな感じで…堪りません!!」
後輩、レイラの姿を見ながら先輩二人は笑って同意をする。
やいのやいのしながらもお昼のギルドカウンターの時間はゆっくりと過ぎていった。
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