支払い方法

 コンビニの支払い方法も色々ありますよね。

 現金、クレカ、電子マネーにクオカード、商品券、ポイント払い、引換券、あんなに支払い方法が多いのに、店員さんはよく対応できてるなぁって思いますよ、驚きます。

 で、本題に入るんですけど、この前コンビニに行った時なんですけど、俺の前にカップルが並んでて、いや……別に普通のカップルですよ、大学生ぐらいでしたね。

 高校生より行動範囲が広くて社会人ほど将来のことを考えなくていい、楽しい時期、羨ましいですよ。

 そんな二人が、まぁアルコール含めた三千円ぐらいの買い物してて、連休前ですからね。家飲みするのかな、羨ましいなぁ、って思ってたんですけど……どうも彼氏くんの方が慌ててる。


「どうしたのたっくん?」

「やば……ちょっと足りねぇわ」

「大丈夫、大丈夫、そんぐらいアタシ出すよぉ」

「いや良いって良いって」


 彼女さんが財布取り出そうとするのを、彼氏くんが笑顔で抑えるんですよ。

 足りないって言っても大した額じゃ無いみたいだから、出してもらえばいいのに、なんでしょうねぇ、でもそういうの僕は嫌いじゃないんですけどね。


「すいません、足りない分は人間払いで」

「かしこまりました」

 彼氏くん、レジカウンターの前に財布の中身全部置いた後に鞄からナイフ取り出して、彼女さんのお腹のあたり抉るように振るいました。

 コンビニ中に彼女さんの悲鳴が響き渡ったんですけど、僕が動揺してるだけで、店員さんも他のお客さんも、当然彼氏くんも全然平然としてる。


「ナイフを一回振るった際に付着する血と肉片で」

「申し訳ございません……これだともう少しだけ足りないですね」

「あー……ごめん、もっかい頼むわ」

「ヒッ」


 彼氏くんはヘラヘラと頭を下げて、もう一回ナイフを彼女さんに向けました。

 彼女さんは恐怖に顔を歪めて、ガタガタ震えながら、それでも必死こいてコンビニから逃げ出そうとしてました。

 周りがあんまりにも平然としてて、助けてなんて言えなかったんでしょうね。

 手慣れてましたね。

 それを彼氏くん、彼女の肩を掴んで背中を刺しちゃうんですよ。

 二度目の悲鳴は一度目よりも小さかったです。


「背中の分の出血も追加で」

「かしこまりました」

 それで彼氏くん、ナイフをレジに置くわけです。

 店員さん、ナイフを変な布みたいなので拭った後レジの機械を操作して、それで終わりでした。


 店員さんは「ありがとうございました」って慇懃に頭を下げるだけだし、彼氏くんは「じゃ、行こっか」って彼女さんに対してニコニコ笑いかけてるし、彼女さんは本当に何が起こってるのかわからない感じでうずくまってるし。

 救急車を呼ばなきゃとか、それよりも警察を呼ばなきゃとか、僕の頭の中で色々と考えがぐるぐる回ってるんですけど、とりあえず僕が最初にしたことは一つでした。


「その支払い方法について教えてくれますか?」

 僕ね、妻子がいるからいざという時に使えるんですよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る