ホットスナック

 コンビニに限った話じゃないんですけど、期限切れの食品って廃棄されるじゃないですか。

 お弁当とかパンとか惣菜とか飲み物とか、カップ麺とかお菓子あたりは期限が長すぎていまいちピンと来ませんけど。

 で、レジ横にあるホットスナック……あれですよ、アメリカンドッグとか唐揚げとか、あれも廃棄されちゃうわけです。

 一日保たないですよね。

 勿体ないなぁと思いつつも、私は買わない人なんですけど。


 一ヶ月くらい前に、日付が変わるギリギリぐらいの時間帯のコンビニに行きまして、まぁ私以外にはお客さん一人だけで、ワンオペ……なのか、よくわからないんですけど、レジにいる店員さんは一人だけでしたね。

 で、サラダパスタを持ってレジに向かったら、もう先にレジに人がいて、なんか店員さんが頭下げて断ってるみたいなんですね。


 ホットスナックのケースって明かりついてるじゃないですか、あれただの明かりってだけじゃなくて保温機能的なものらしいですけど。

 その明かりが消えてて、でも商品は残ってるんですね。


「あるじゃん、アメリカンドッグくれよ」

「申し訳ございません、これらは廃棄いたしますので」


 なんか話を聞いてるともうホットスナックを廃棄する時間が来ていると、でも商品はあるんだから売ってくれてもいいだろ、とそういう感じみたいなんですね。

 まぁ、私も別に商品があるんだから売ってあげてもいいと思うんですけどね。

 どうせ捨てるんだろうし。


 で、店員さんが「申し訳ございません、申し訳ございません」って言いながら、トングでホットスナック掴んでゴミ箱に捨てていくんですよ。

「いや、何してんだアンタ」

「廃棄時間を過ぎたものは生ゴミなんです!」

 そう言って、ホットスナック全部ゴミ箱に突っ込んで、靴で踏んづけてグチャグチャにしていくんですね。


「お客様に生ゴミを食べさせるわけにはいけませんので!生ゴミの分際で形を保っているから……!!生ゴミにしますので!今、完全な生ゴミにしますので!」

「わかった……わかったから、やめてくれ!!」

「生ゴミにすればわかって頂けますよね!?」

 先に並んでたお客さん、ちょっと威圧的なぐらいだったんだけど店員さんの態度に顔が青ざめてましたね。見てるだけの私だってビビりましたもん。

 で、その後なんかブツブツ言ってるんですね。


「あぁ……くっそ……アメリカンドッグが喰いたかったのによォ……」

 そうブツブツ呟きながら、レジのスイングドア……わかります?あの西部劇に出てくるみたいな、腰ぐらいの高さにある、レジ内にお客さんを入れないためのドアです。あそこに近づいていくんですね。

 スイングドアって別にお客さんでも開けようと思えば簡単に開けられるんですよ、 だからあのお客さん、スイングドアを開いて……勢いよくゴミ箱に頭を突っ込んで、他のゴミとホットスナック、そして靴の汚れでグチャグチャになったアメリカンドッグを貪ってるんです。

 店員さん当然止めようとしますけど、お客さん全然止まらないんですよ。

 だから防犯ブザーみたいなやつ鳴らしてたんですけど、それでも全然怯まずに食べてるんですね。


 それからどうなったか?

 さぁ、私あんまり怖かったので逃げちゃいました。


 社会から廃棄されたか、あるいはあの店員さんに本当に生ゴミにされたんじゃないかってこと……たまに考えますけどね。

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